計画研究
時間は記憶によって前進する。本年度は前年度の成果を受けて、脳の海馬で観察される脳波、Sharp-Wave Ripple(SW-Rs)に焦点を当てた研究を行った。SW-Rsは記憶の固定過程に関与している。近年、in vivoにおいて報酬系が活性化するとSW-Rsの頻度が上昇することが報告されているが、詳しいメカニズムは明らかにされていない。そこで、ドパミンの海馬への適用がSW-Rsの頻度調節にどのような影響を与えるか明らかにすることを目的とし、in vitroの系を用いて薬理学的な検討を行った。生後3-4週齢のICRマウスから急性切片を作成し、細胞外記録法により海馬CA1野錐体細胞層で生じる自発的なSW-Rsを観察した。頻度の安定を確認した後、ドパミンをSW-Rs発生中の海馬スライス標本に灌流適用した。SW-Rsの頻度が有意に上昇した。この頻度上昇はドパミンのwash-out後も持続し、可塑性を呈した。また、この効果はD1/D5アンタゴニストSCH23390によって阻害されたが、D2アンタゴニストsulpirideによっては阻害されなかった。そこでD1/D5アゴニストSKF38393を同様に灌流適用したところ、ドパミンを適用した際と同様の頻度上昇が見られた。ドパミンはlate-LTPを引き起こし、LTPはSW-Rsの発生に関わることが知られている。しかし、我々の結果は、late-LTPでは作用の速さが説明し難い点、その効果がwashout後も持続する点で興味深い。これらの結果より、ドパミンはD1/D5受容体を介し、late-LTPとは別の経路を通じて、SW-Rsの発生を調節していることが推察される。
2: おおむね順調に進展している
SW-Rsについては健全に研究が展開しておりおり、来年度にはin vivoにも研究標本が拡大できる予定である。行動試験はマウスのみならず、ヒトの実験にも着手することができ、予定通りである。マウスの化学遺伝学、およびヒト試験のデータマイニングを来年度javascript:onTransientSave();に残しているが、ようやく終了の目処がたった。
SR-Wsについては、海馬スライスからの64チャネル記録で時空間パターンを炙りだすこと、覚醒下マウスから閾値下膜電位を記録するマウス行動試験について、DREDDシステムを用いて、ヒスタミン系神経もしくは嗅周皮質神経を刺激したときの記憶想起に及ぼす影響を検討する。その後に論文を執筆する
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すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 9件、 謝辞記載あり 9件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)
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