研究領域 | こころの時間学 ―現在・過去・未来の起源を求めて― |
研究課題/領域番号 |
25119005
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
田中 真樹 北海道大学, 医学研究科, 教授 (90301887)
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研究期間 (年度) |
2013-06-28 – 2018-03-31
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キーワード | 計時 / 感覚予測 / 大脳小脳ループ / 大脳基底核ループ / 小脳歯状核 / 線条体 / 霊長類 |
研究実績の概要 |
前年度に引き続き、感覚予測と計時の神経機構をそれぞれ欠落オドボール課題と時間生成課題を訓練したサルで調べている。3年目となる平成27年度は、とくに前者で多くの進展があった。 以前行った小脳の不活化実験により、欠落オドボールの検出には複数のメカニズムがあることが示唆されていたが、これを心理物理実験で明らかにし、英文論文として発表した(Ohmae & Tanaka, Scientific Reports)。また、小脳核から単一ニューロンを記録しながら微量のGABA拮抗薬、AMPA/NMDA拮抗薬を注入する実験を博士課程の大学院生が行い、刺激間隔に応じた活動変化は小脳皮質経由であることを明らかにしつつある。この実験は平成28年度前半まで継続する。また、同大学院生が小脳核の電気刺激実験を行い、その結果を論文にまとめている。さらに、修士課程の大学院生が同課題中の線条体の神経活動を調べ、刺激間隔に応じて漸増する一過性の活動を発見した。一部のニューロンは刺激欠落をボタン押しで答えさせた場合にのみ応答し、効果器による選択性を示した。今後、さらにデータを集める必要がある。 時間生成課題に関しては、線条体の薬物投与実験を論文にまとめ、現在revision中である。今後はすでにデータの集まっている小脳核と線条体の神経活動について論文作成を急ぐ必要がある。また、平成27年度に進学した博士課程学生が生成時間と瞳孔径が逆相関することを発見し、現在論文作成中である。また、計時の際の線条体の局所場電位解析を進めている。さらに、これらの研究を飛躍的に発展させることができる可能性のある分子ツールの導入に向けて、準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述のように、欠落オドボール課題を用いた実験では様々な発見があった。また、昨年度は手技の確立に時間がかかっていた薬剤注入実験も順調に進んでいる。さらに、線条体から新規の神経活動を記録することに成功し、その詳細な特性を調べている。ただし、論文作成に向けて最終段階にあった運動性視床の実験に関しては、学生の休学などの影響で停滞している。計時に関した研究では、現在投稿中の論文と、準備中の論文がある。H27年度の追加支援によって調達することができた多チャンネル増幅器を用いた集合電位記録や、現在準備を進めている光遺伝学的手法を組み合わせた研究を進めていく予定である。このように、メインの実験データが着実に蓄積されつつあり、今後の論文業績も見込まれ、研究は順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
欠落オドボール課題を用いた研究では、小脳の刺激実験を論文にまとめ、小脳の薬理実験をH28年度前半まで継続してまとめにかかり、新たに発見した基底核の神経活動を詳細に調べる。とくに、視覚刺激の提示と行動指標について新たなパラメータを導入しており、小脳と基底核の神経活動をそれぞれ特徴づけることを目指す。視床の実験についても現有のデータをもとに少しずつ論文作成を行う。時間再現課題に関しては、線条体と歯状核の神経活動の比較についての論文をまとめるとともに、線条体の局所場電位記録の実験を進める。また、軌道予測や同期運動、瞳孔径測定などを用いた探索的な研究を並行して進めており、これも順次学会発表して論文にまとめる。共同研究を通じた分子ツールの適用も準備を進め、H28年度には光遺伝学、化学遺伝学的手法を用いた実験をそれぞれ進める。脊髄小脳変性症の行動解析・画像解析についてもこれまで通り研究を継続する。
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