計画研究
本研究では、神経疾患を通して「こころの時間」障害に関連する病態メカニズムを明らかにし,疾患の診断や治療につながる知見を得ることを目的としてきた。これまでの臨床神経心理学の中では「こころの時間」はほとんど扱われてこなかったが、多岐にわたる疾患を検討した本研究によって,そのメカニズムの一端が垣間見えてきた。特に「過去」「現在」「未来」のような「こころの時間の流れ方」への疾患による修飾について、神経基盤に基づいた原因の究明が可能であることが分かってきた。具体的には、パーキンソン病・アルツハイマー病・辺縁系脳炎・脳梁無形成の各疾患症例における(1)時間推測・時間的順序の障害の検討、(2)未来感を作り出す展望記憶の検討、(3)時間意識と作話病態との関連の検討,、4)時間表の計画能力に関する検討を行い、データの収集から論文掲載まで多岐に渡る症例で成果を挙げた。(1)ではパーキンソン病における時間幅評価の特異性を示し,線条体を中心とする時間処理ネットワークの障害を指摘した。(2)ではアルツハイマー病における未来展望の意識問題を明らかにした。(3)では辺縁系脳炎におけるage awarenessの障害を示し、時間軸の整合性において眼窩前頭皮質の役割が重要であることが示された。(4)では脳梁無形成における見当識の時間感覚障害を見出し、時間を保持する楔前部の役割を考察した。多岐に渡る神経疾患の障害を横断的に検討することによって「こころの時間」を生成・表出・保持するメカニズムが脳部位ごとに分かれており、またそれぞれの機能によって中心的な役割を担う脳部位があることを示した。これらの成果は疾患の診断に役立ち,治療法の選択肢を増やす可能性を持つ。
平成29年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 5件、 査読あり 5件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件) 図書 (3件)
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