研究領域 | こころの時間学 ―現在・過去・未来の起源を求めて― |
研究課題/領域番号 |
25119007
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研究機関 | 明海大学 |
研究代表者 |
大津 由紀雄 明海大学, 外国語学部, 教授 (80100410)
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研究分担者 |
飯田 隆 日本大学, 文理学部, 教授 (10117327)
今西 典子 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (70111739)
小町 将之 静岡大学, 人文社会科学部, 准教授 (70467364)
嶋田 珠巳 明海大学, 外国語学部, 准教授 (80565383)
西山 佑司 慶應義塾大学, 言語文化研究所(三田), 名誉教授 (90051747)
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研究期間 (年度) |
2013-06-28 – 2018-03-31
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キーワード | 言語 / 脳の時間地図 / 楔前部 / 措定と指定 / 時制辞 / 言語類型論 / 言語獲得 / 史的変化 |
研究実績の概要 |
1 北澤班との共同研究を行った。北澤班とは日本語を対象に時間表現を含んだ文の処理をfMRIを使って調査し、現在の陳述は過去や未来の陳述よりも楔前部を強く刺激することを明らかにし、脳の時間地図を作成作業を前進させた。 2 S1(主節)が措定コピュラ文(predicational sentences)の場合、S2 (理由節)は、推論の理由節とも、原因の理由節とも共起するが、S1 が(倒置)指定コピュラ文(specificational sentences) の場合、理由節(S2)は推論の理由節としか共起しないことを指摘した。そして、なぜそのような違いが生じるのかという問題を提起し、「(倒置)指定文は、措定文と異なり、世界を直接記述するタイプの文でない。したがって(倒置)指定文は、時間概念から独立の構文である」とする仮説を提唱し、この仮説がどこまで妥当であるかの検証をおこなった。 3 文構造において時制辞の補部となる動詞句内において、その意味構造を「出来事」の観点から分析した。具体的には、相互代名詞の獲得に関して、英語を母語とする話者の発話データベースを検索して誤用例を見つけ出し、それが幼児の言語知識によってどのように特徴づけられるかを検討した。 4 事態や出来事の認識の仕方および(im)perfectivityの言語表現化の可能性と発話時との同時性を捉える現在時制という時間の認識の仕方について類型論、言語獲得、史的変化に係るこれまでの知見に基づき、英語の動詞は語彙的に[+perf]という素性を持つという仮説の妥当性を検討するため、日本語の動詞の意味と現在形および「ている/てある」構文について考察必要があることを明らかにした。 5 連続ワークショップ Philosophy of Mental Timeをこれまでに引き続き開催した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
時間表現に関する哲学及び言語理論の観点からの分析はほぼ予定どおり進展している。神経科学関係の班との共同研究については、北澤班との共同研究はほぼ予定どおり進展しているが、河村班との共同研究については実験の立案が遅れ、来年度に持ち越された部分が大きい。
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今後の研究の推進方策 |
1 時間表現に関する哲学及び言語理論の観点からの分析はこれまでの成果を整理し、今後の研究課題を明らかにする。 2 北澤班との共同研究については英語を対象とした実験を継続し、日本語を対象にした実験結果と照らし合わせることによって、処理の普遍性と個別性を明らかにする。 3 河村班との共同研究を進展させ、時間の脳内処理とその障害についてある程度まとまった成果があがるよう努める。 4 研究成果を社会に還元するためにサーベイ論文を公刊する。
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