計画研究
本研究は、スパースモデリングの手法を電波干渉計のイメージング解析に適用して超解像技法を実現し、それを基にブラックホールの直接撮像を実現することを目指している。第二年次にあたる本年度は、初年度に開発したLASSOのプログラムを実データに適用してその評価を継続した。特に、ブラックホールの直接撮像にとって重要天体であるM87について、43GHz帯および86GHz帯の観測データにスパースモデリングを適用し、実際に分解能が向上することを実データに基づき確かめた。また、スパースモデリング手法をさらに発展させるものとして、closure位相を観測量とする非線形な問題に適用可能なスパースモデリングのイメージング手法について検討し、コーディングと検証を進めた。また、ミリ波VLBIによるブラックホール直接撮像に向けた準備研究として、M87の1.3mmのVLBI観測のデータ解析を進めた。この観測は参加局が3局のみであり、イメージングをすることは難しいが、今回初めてM87の1.3mm帯の観測からclosure位相を測定することに成功した。実データでのclosure位相の検出と、上記で述べたclosure位相を観測量とするイメージングコード開発の進展により、1.3mmのVLBI観測による実際にブラックホールの撮像に着実に近づいたといえる。このほか、ALMAを含む1.3mmの装置整備のために、ALMAの観測所に設置した光伝送装置の基板更新による性能安定化対策を行い、国際的な観測アレイの整備にも貢献した。また、京都大、広島大の研究者が中心となって、スパースモデリングのより広範囲な天文学分野への応用も進めた。具体的には、京都大のチームが矮新星の光度曲線の解析にLASSOを用いて様々なモードの抽出に成功し、この光度変動解析の分野でスパースモデリングの有効性を実証した。
2: おおむね順調に進展している
当初計画で設定した3課題について達成度を見ると、1つ目の課題であるスパースモデリングによるイメージング技法については、closure位相を用いた非線形手法も開発の目途がついたことにより、ほぼ当初の課題を達成しつつある。また、2つ目の課題であるミリ波VLBIによるブラックホール観測の推進については、ALMAのミリ波VLBIの装置整備が完了したこと、および3局による試験観測データでclosure位相を確認したことにより、順調に進んでいる。また、3つ目の課題であるブラックホール研究ついても、既存データなどを用いてブラックホールに関する研究成果が出版されるなど、着実に進んでいると考えられる。以上の状況をまとめるに、現在の達成度について、「(2)おおむね順調に進展している」と判断する。
新年度に向けてイメージング手法をさらに高機能化できる可能性として、closure位相を基に観測方程式を線形化する方法のアイデアがB01-1班との共同研究から生まれている。次年度はこの手法のコーディングと評価を進め、スパースモデリングによる電波干渉計撮像に新たな機能を追加する。また、M87と並んで重要なターゲットである銀河系中心ブラックホールいて座A*についてもシミュレーションを行い、星間散乱の効果をどこまで取り除けるかについて検討する。また、ALMAを用いた1mm VLBIの実現にむけた活動を継続するとともに、スパースモデリングのより広範な天文学分野への応用もさらに進める。
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すべて 国際共同研究 (5件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 8件、 査読あり 8件) 備考 (2件)
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