研究領域 | スパースモデリングの深化と高次元データ駆動科学の創成 |
研究課題/領域番号 |
25120008
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田中 利幸 京都大学, 情報学研究科, 教授 (10254153)
|
研究分担者 |
池田 思朗 統計数理研究所, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (30336101)
|
研究期間 (年度) |
2013-06-28 – 2018-03-31
|
キーワード | 圧縮センシング / スパースモデリング / ベイズ統計 |
研究実績の概要 |
【課題1】圧縮センシングのオーダーメイド型研究:医学班とのMRI画像再構成の共同研究を拡張し,SPECT画像再構成に圧縮センシングを適用し,ランダム符号化開口をコリメータに使う手法を開発した.天文観測で使われる超長基線電波干渉計(VLBI)のイメージングでは,天体画像のスパース性に注目することでアンテナ数の制約による不良設定性の改善が期待できる.天文学班と共同でアルゴリズムの開発を行い,シミュレーションによる検証およびを実観測データへの適用を行い,良好な復元像を確認した.天文学で標準光源として用いられるIa型超新星の最大光度を様々な観測量から正確に推定するという研究課題に対し,天文学班と協力し,スパースモデリングの方法を用いて適切な変量の選別を行った. 【課題2】圧縮センシングへのベイズ推定の導入:コンプトンカメラは衛星による天文観測のみならず,福島の土壌汚染の観測のためにも用いられようとしている.JAXAのグループや天文学班と協力して,コンプトンカメラのイメージングの問題をガンマ線源分布のベイズ推定の枠組みで定式化し,EMアルゴリズムと直線探索アルゴリズムを組み合わせた画像再構成法を提案した. 【課題3】数理的横断研究:MRIやNMR分光法, VLBIなどでの問題意識を参考に,ノイジーな線形観測からの疎ベクトルのL1再構成において,同一観測を複数回行って平均化によりノイズ抑圧を行うことが性能に与える影響について検討した.圧縮センシングの高速再構成アルゴリズムであるFISTAおよびNESTAの数理的基礎を与えるメジャライザー最小化の数理構造に注目して,ボルツマン機械学習への適用を試みるとともに,表面のミクロな構造から相互作用の様子の推定を目指す物理モデリング班へ情報提供を行った.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【課題1】ー【課題3】における具体的な研究課題は,研究開始時と比較すると若干の変更はあるものの,おおむね当初計画した内容に沿って本年度の計画が遂行されている.【課題1】【課題2】で実施した研究は,主に医学班,天文学班との共同で実施している.また,【課題3】で実施したノイジーな線形観測からの疎ベクトルのL1再構成に関する研究は,医学班,生命科学班,天文学班などでの問題意識にもとづいて実施し,大自由度班の研究内容とも関連している.これらのことから,領域内の連携という観点でも,モデリンググループに属する班としての役割を果たせているものと考えている.研究代表者が実施したSPECTに関する研究,研究分担者が実施したIa型超新星に関する研究は,ともに本新学術領域研究の採択後に医学班および天文学班との連携のもとに開始した新規の研究課題であり,いずれも学会発表や論文出版などの具体的な成果が得られている.以上のことから,本研究課題における研究活動はおおむね順調に進展していると判断する.
|
今後の研究の推進方策 |
領域内の応用分野との連携に関して,これまでに行ってきた医学班,天文学班との共同研究に加えて,生命科学班においてタンパク質に対するNMR分光法でのアミノ酸残基の効率的同定法として検討されているSiCodeに関して,情報科学の観点からの検討を開始する予定である.研究支援者の選考ならびに雇用開始が当初計画に対して遅れているので,平成27年度の早期に研究支援者の選考を終了し雇用を開始する必要がある.
|