計画研究
本研究者らは、空気中でも取り扱い可能なほど安定な基底多重項分子等の新規な開殻pi電子系の合成、単離を検討している。本研究では、開殻piユニットであるニトロニルニトロキシド (NN) の直接導入法を中心に、これまでに独自に開発してきた自在に開殻pi電子系分子を創成する「自在開殻pi造形」の確立を目指している。1. 閉殻構造をもつ分子群を足場とした開殻piユニット直接連結型金属錯体による開殻pi造形:閉殻構造を有するpi電子系分子群に対して、ホスフィン部やN-ヘテロサイクリックカルベン部を足場とし、金(I)イオンを用いることで迅速かつ効率的に NN ユニットを導入する方法を開発した。複数の NN ユニットを導入することも可能であり、NN間における磁気的相互作用や電子的相互作用に関する知見を蓄積した。領域内外での本法を利用した共同研究を進めており、その中でA01 の山村との研究成果を Dalton Transaction 誌に発表した。また、イミノニトロキシドを利用したトリラジカル金(I)三核錯体の合成、単離、結晶化に成功し、基底四重項種であることを見出した。本研究は金属種を介した磁気的相互作用制御法の新しい様式の一つと考えられる。現在、さらなる物性解明を検討している。2. NN 直接連結型金属錯体を鍵とした芳香環への開殻piユニット直接導入による開殻pi造形:これまでNN-金(I)-ホスフィン錯体による方法の他に、NN-金(I)-N-ヘテロサイクリックカルベン、NN-銅(I)-ジホスフィン錯体を用いてもカップリング反応による芳香環への NN 導入化が可能であることを見出した。さらに、金属錯体を介さずとも無置換NN体を用いてもカップリング反応が進行する系を見出した。現在、さらなら反応検討を行っている。また、領域内外での本法を利用した共同研究を進めている。
2: おおむね順調に進展している
昨年度よりさらに進んだ NN 導入法を確立すること、また、種々のカップリング反応を検討することで、多様な閉殻pi電子系の開殻化に成功している。また、開殻piユニット間の相互作用により予期せぬ物性の発現も見出した。開発した合成法や分子を利用して、領域内の複数のグループと共同研究を進めている。
昨年度までに確立してきた開殻pi造形法のさらなる革新と、本手法を用いた領域内・外の共同研究をさらに検討する。1. 閉殻構造をもつ分子群を足場とした開殻piユニット直接連結型金属錯体による開殻pi造形:N-ヘテロサイクリックカルベンを利用することで、多様な pi 系に NN を導入することを検討する。また、磁性金属イオンを用いた系を開発し、それらの物性を検討する。2. NN 直接連結型金属錯体を鍵とした芳香環への開殻piユニット直接導入による開殻pi造形:金(I)イオン等の貴金属に頼らないカップリング法を検討する。例えば、Cu(I)やNi(II)、また、Zn(II)、Mg(II) 等を用いた系を検討する。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (31件) (うち国際学会 19件、 招待講演 2件)
Dalton Trans.
巻: 46 ページ: 2653-2659
10.1039/C6DT04685A
J. Phys. Chem. Lett.
巻: 8 ページ: 661-665
10.1021/acs.jpclett.6b02887
Angew. Chem. Int. Ed.
巻: 55 ページ: 10791-10794
10.1002/anie.201604320
Tetrahedron Lett.
巻: 57 ページ: 4082-4085
10.1016/j.tetlet.2016.07.088
J. Phys. Chem. A
巻: 120 ページ: 8093-8103
10.1021/acs.jpca.6b07705