1)ヘテラスマネンを鍵骨格とした機能探索 ボウル型構造を有するトリチアスマネンに様々な長鎖アルキル基を導入し、その熱的挙動を調べたところ、液晶性の発現を見いだした。加えて、電場応答性を調べたところ、これらの化合物が液晶性を示す示さない関わらず、強誘電性を示すことを明らかにした。そこで、平面構造を有するトリフェニレンに様々な長鎖アルキル基を導入し、その電場応答性を調べたところ、強誘電性を示さないことがわかった。つまり、長鎖アルキル基を有するトリチアスマネンの強誘電性は、中心骨格のボウル反転に由来するものであることを明らかにした。強誘電性発現のための分子設計戦略は限られていたが、ボウル反転が強誘電性発現のための新しい戦略となることを示した本成果は極めて意義深い。 2)ヘテラスマネンを利用したπ電子系の拡張 パラジウム触媒共存下、トリフェニレンの湾内炭素がスズ官能基で架橋されたトリスタンナスマネンと様々な位置にフッ素原子を有するオルトジハロベンゼンの反応を検討したところ、二重クロスカップリング反応が進行し、極めて歪んだ構造をもつポリフルオロトリベンゾコロネン誘導体の合成に成功した。 3)ジアニオン性π配位子を用いた遷移金属錯体の合成とその物性探索 合成した新規なアニオン性フェロセンの電子状態を解明するべく、メスバウワー測定および理論計算を行ったところ、一価の鉄原子を中心にもつ初めてのサンドウィッチ化合物であることがわかった。ジアニオン性π配位子の特徴を活かし、ルテニウムとロジウムを有する異核金属錯体の合成に成功した。この化合物を前駆体とし、スズ、ロジウムおよびルテニウムからなるナノ粒子の合成にも成功した。
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