研究領域 | π造形科学: 電子と構造のダイナミズム制御による新機能創出 |
研究課題/領域番号 |
26102008
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
福島 孝典 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (70281970)
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研究分担者 |
庄子 良晃 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (40525573)
石割 文崇 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (00635807)
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研究期間 (年度) |
2014-07-10 – 2019-03-31
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キーワード | 自己集合 / π共役系分子 / 有機薄膜 / 液晶 / 有機エレクトロニクス |
研究実績の概要 |
本研究では、独自に設計した二次元集合化能力をもつ分子モチーフを基盤とし、巨視的にも構造異方性と完全性を有するπシステムを造形する。こうして得られる大規模分子集積体に様々なπ電子ユニットを組み込み、それらの機能を異方的に集約・増幅させることで発現する新現象・新機能を探求する。平成29年度はこれまでに引き続き、大面積二次元集合化能力を持ち、様々な基板上で高秩序大面積薄膜を与える「三脚型トリプチセン」を基盤とした研究を展開した。具体的には、有機高分子薄膜からなるゲート絶縁膜上にトリプチセン薄膜を形成することにより、有機薄膜トランジスタの高性能化を実現した。本研究成果はNature Nanotech.誌に報告した。さらに関連研究を、ハイデルベルグ大学のBunz教授の研究グループから学生を日本に留学させ、共同で実施するに至っている。また、三脚型トリプチセンに三つのチオール基を持たせた誘導体が、全てのチオール基が金基板と結合し、非常に垂直性高く金表面状に吸着することを見出した。上記に加えて、電子供与性置換基を導入した湾曲π共役系分子ヘキサチオアルキルスマネンのフラーレン包摂能と液晶性に関する論文をChem. Sci.誌に報告したほか、特異な力学応答挙動を示すスマネン誘導体の、変形に伴う集合構造の変化の様子をその場X線回折測定により詳細に解明した。Feringa教授との国際共同研究では、自己集合性分子モーターからなる光アクチュエーターを開発し、Nature Chem.誌に報告した。また、ホウ素が媒介する連続的な炭素-炭素結合形成反応を高分子基質に用いることにより、ミクロ多孔性高分子が得られることをMater. Chem. Front.誌に発表したほか、本反応に使用する9-クロロ-9-ボラフルオレンが試薬として市販されるに至った。以上の成果を学術論文18件、学会発表41件により公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成29年度には、三脚型トリプチセンによる高秩序大面積有機薄膜の有機エレクトロニクスへの応用に関して論文発表を行い、国内外で高い評価を受け、学生派遣型の国際共同研究に発展した。また、表面吸着性三脚型トリプチセンに関しても、国際共同研究により、優れた分子三脚として機能する可能性を見出している。加えて、三脚型トリプチセンの高分子材料への応用可能性も見出したほか、連続的炭素-炭素結合形成反応を引き起こす9-クロロ-9-ボラフルオレンの市販化も行い、基礎化学から物質・材料科学に至る様々な分野にインパクトを与える大きな可能性を秘めた成果が次々と得られている。以上より、本研究は「当初の計画以上に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、種々の機能団を導入した三脚型トリプチセン分子を中心に、それらを用いた大面積自己集合化薄膜や自己組織化単分子膜を構築する。その構造、物性、機能に関して、幅広い専門分野の領域内研究者や海外のπHUB関連研究者らと、多角的かつ多面的な共同研究を推進する。例えば、物質合成を櫻井・田中ら(A01)との協働により、光・電子機能を有する大面積薄膜の物性評価は関(A03)・山本(A02)・山根(A03)・宮坂(A02)・羽曾部(A02)・中村(A03)との協働により、大面積双極性ローターアレイや湾曲π共役分子の誘電応答評価は芥川(A02)との協働により実施する。開発した巨視的π造形システムのデバイス化は、竹延(A03)との協働により行う。ユニークな力学応答挙動を示す物質の、変形に伴う集合構造変化の観測を、足立(A03)との協働により実施する。また、新手法により合成されたπ電子系分子および集合体の電子物性の理論予測は多田・杉本(A03)らと協働する。海外のπ-HUB関連研究者であるグラーツ工科大学Zojer教授、ハイデルベルグ大学Zharnikov教授、聖アンドリュース大学Buck教授と、表面吸着性三脚型トリプチセンに関する共同研究を強力に推進する。Zojer教授を日本に招聘し、研究推進のための打ち合わせを実施する。また最終年度である平成30年度には、学会や論文発表を通じた成果発信を特に積極的に行う。
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