研究領域 | π造形科学: 電子と構造のダイナミズム制御による新機能創出 |
研究課題/領域番号 |
26102009
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
竹内 正之 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, グループリーダー (70264083)
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研究分担者 |
杉安 和憲 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 主幹研究員 (80469759)
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研究期間 (年度) |
2014-07-10 – 2019-03-31
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キーワード | 共役系高分子 / π造形 / アンサンブル / 超分子ポリマー |
研究実績の概要 |
本研究の2つの柱である、[1] 徹底的にπ造形された特異構造π共役系高分子の開発、および[2] 機能性分子・高分子の集合過程の制御について以下の進捗があった。 [1]被覆された長い主鎖構造を持つポリチオフェンについては合成が終了し、A03メンバーとの協働のもとに物性評価、特にディフェクトの効果について検討を進めているところである。また、新たに検討を始めた強磁性導電性高分子については、モノマーの設計と合成に目処がたちつつある。 不斉部位を側鎖に導入したポリ-9,9’-ビフルオレニリデンでは、9,9’-ビフルオレニリデン骨格のヘリシティがポリマーの立体規則性に反映される。溶媒によってその立体規則性が異なるという知見が円偏光二色性スペクトルにより得られ、今後詳細を検討する(Dynamic-π)。また、物性評価を進めていた高歪み9,9’-ビフルオレニリデン誘導体は、二重結合の二面角により電子物性をチューニングできることを明らかとした。特に56度の2面角を有する誘導体については、高圧下におけるコンフォメーション変化とそれに伴う物性変化を期待したが、結晶格子は等方的に変化した(A03メンバーとの協働)。分子設計を再考しElastic-πおよびDynamic-πへの研究展開を検討する。 [2]分子集合体の形成過程を速度論的に評価し、同一分子から1次元集合体と2次元集合体を速度論的に作り分ける方法を発見し、それぞれ集合形態に由来した電子機能を示すことを確認した。また、アゾベンゼンの光異性化を利用したリビング超分子重合システムの構築を行い、光照射の強度、時間がその重合過程の制御因子として利用可能であることを明らかとした(A02班内の協働)。速度論的な分子集合プロセスの制御に関して、いくつかの候補分子を合成し、その集合挙動について検討を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新たに開始した精密設計されたポーラロン強磁性体の合成のめどがつき、また、動的な立体規則性を示すポリ-9,9’-ビフルオレニリデンの合成を終了するなど、Intrinsic-πに関しても順調な進捗があった。 複数の平衡を交錯させた速度論的な自己集合プロセスを利用することによって、熱力学的には選ばれない超分子集合体を合成できることを実証し、同一分子から1次元集合体と2次元集合体を速度論的に作り分ける方法を確立した。Dynamic-πの観点から非常に興味深い現象である。今後、この現象のメカニズムを詳細に探求し、新現象を新機能の発現へとつなげる。可動部位を有するπ共役系分子を用いて、バルク物性を制御するという新しい研究展開についても領域内共同研究が順調に推移した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の2本の柱である、[1] 徹底的にπ造形された特異構造π共役系高分子の開発、および[2] 機能性分子・高分子の集合過程の制御について以下の推進方策を立てている。 [1]本研究については、前半3年間の研究の進展を元にして、領域内で共同研究を展開中である。29年度に得られた結果をフィードバックすることによって、分子設計のエッセンスを昇華し、π造形ならではの「究極の」特異構造π共役系高分子を合成し、新たな共同研究やアプリケーションのフェーズへと軸足を移す。 [2] 世界的に大きな注目を集めている速度論的な分子集合挙動は、その挙動を予測することが依然困難である。引き続き、分子合成を行い、構造―集合挙動相関を検討する。ある種の分子集合体においては、その成長プロセスが非常に素早く、実験的に追跡することが困難であったが、昨年度の補正予算措置で購入したストップドフロー分光装置によって過渡的に生成する分子集合体の評価を試みる。
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