計画研究
昨年度は、ねじれたπ電子系コアを有するバルビツール酸モノマー分子が示す、「湾曲性を有する超分子ポリマー」の自発的フォールディング現象のメカニズムに基づき、光によるフォールディングが可能な「湾曲性を有する超分子ポリマー」の研究に取り組んだ。光応答部位として、ジアリールエテンを有するモノマー分子を設計し、合成した。ジアリールエテンは、紫外光照射によって閉環反応を起こし、π共役系が拡張されることが分かっている。すなわち、開環体状態ではモノマー分子がねじれ、構造が乱れた超分子ポリマーが形成されるが、閉環体にすることで分子間におけるπ電子間相互作用が強まり、構造の乱れを修復できると考えた。開環体状態にあるモノマー分子をメチルシクロヘキサン中で冷却すると、ランダムコイル状に伸長した超分子ポリマーが形成されることがAFM観察により明らかになった。AFM画像を詳細に観察すると、分子と強く吸着するグラファイトを基板として用いると、超分子ポリマーが所々切断されている様子が見受けられた。興味深いことに、切断される箇所は湾曲の方向が変化する継ぎ目であり、この部分は以前の研究によって、欠陥構造であることが示唆されていた。すなわち、今回初めて、AFMにより機械的に脆い欠陥部分を可視化できたと言える。上記のジアリールエテン部が開環体状態にある超分子ポリマーの溶液に紫外光を照射すると、吸収スペクトルの劇的な変化が現れ、ジアリールエテン部位の閉環反応が示唆された。AFMにより超分子ポリマーの構造を観察すると、螺旋を巻いたドメインが多く観察されており、また切断されているような部位は見受けられなかった。このことより、ジアリールエテン部が閉環体になることで、欠陥が修復されたと考えられる。この結果は、高エネルギー研究所における小角X線散乱測定においても支持された。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (42件) (うち国際学会 8件、 招待講演 14件) 備考 (1件)
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巻: - ページ: -
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