計画研究
本研究は、A01・A02班により創造・集積化されたπ造形分子の集積体(π造形システム)のキャリア伝導・光・磁気・機械的特性を明らかにし、その結果をシーズとする新現象・新機能の開拓と新奇機能性素子の探索を目的とする。5年間の研究計画において前半は基礎物性の解明・静的な機能性素子作製を、後半は動的変調をトリガーとする新たな機能の『造形』に挑戦する。より具体的に、平成28年度はA01・A02班により創造・集積化されたπ造形システムに対して、平成27年度と同様の切り口(一般的な固体物理の手法を用いた物性測定と、MOS型トランジスタ・両極性トランジスタ・発光トランジスタ作製)に加え、電解質を用いた高密度キャリ蓄積・高強度電場による機能創出、高輝度発光素子にも挑戦した。計画半8グループに加え、公募班7グループより試料提供を受け、様々な素子作製や特性評価に関する共同研究を継続して行った。特に、福島グループとの共同研究より発見した新しいキャリドーパントに関する研究を更に推進し、カーボンナノチューブだけでなくグラフェンや遷移金属ダイカルコゲナイド単層膜などにも本ドーパントが有用であることを見出した(論文投稿中)。羽曾部グループとの研究成果も、数報の論文としてacceptされた。須田グループとは、動的変調をトリガーとする新たな機能の『造形』につながると期待される歪みによる電子状態変調に着手し、金属-絶縁体転移に成功した。グループ内では、電気化学発光セルの大幅な大電流化、高分子材料への高密度キャリドープや熱電変換特性の解明と制御、電解質を用いた新しい発光素子の実現など多くの成果があがっている。以上のように、これまでの基礎物性およびintrinsic-π機能の実現と電解質を用いた機能性素子作製に成功だけでなく、動的変調をトリガーとする新たな機能の『造形』につながる研究を推進した。
1: 当初の計画以上に進展している
平成28年度は、計画班8グループ・公募班7グループより試料提供を受け、結果として6本の共同研究論文が採択された。よって、新学術領域研究で最も重要な領域内共同研究が極めて順調に進展している。これらは、パイ電子材料の枠組みを超え、他研究領域である原子層科学との領域間共同研究にも発展しており、当初の予想を上回る発展をしている。電解質を用いた素子作製も予想以上に進展しており、研究提案時に想定していた研究項目のほとんどが達成されている。特に、他の新学術領域研究(特に原子層科学)との領域間共同研究に発展しつつあり、当初の想定を超え領域内外にて成果があらわれており、極めて順調に(当初の計画以上に)研究が進展していると考える。また、平成29年度以降の着手を想定していた、外場による変調を前倒しで推進している。具体的には熱による変調(熱電変換素子)、電場による変調(Stark効果)、変形による変調(圧力効果)などに着手し、一部では早くも成果があがっており、これらを総合的に評価すると当初の計画以上に進んでいるといえる。
平成29年度は、引き続きA01・A02班により創造・集積化されたπ造形システムに対して、一般的な固体物理の手法を用いた物性測定と素子作製に挑戦する。特に、新たに加わる公募班との共同研究を進める。平成27年度より開始した電解質を用いた機能性素子を更に推進させる。加えて、平成27年度より着手している柔軟性・伸縮性を有する基板を用いた素子作製と動的な外場(歪みを中心に電磁場・光・熱)による物性変調も、平成28年度中に技術的基盤がほぼ確立されたので、様々な材料への適用を進める。これら様々な研究より得られた結果から、機能創出を可能とする新たなパイ造形システムを理論グループとの議論を基にA01・A02班に提案し、より効率的に新現象・新機能の開拓と新奇機能性素子探索を推進する。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (16件) (うち国際共著 4件、 査読あり 16件、 謝辞記載あり 12件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (37件) (うち国際学会 25件、 招待講演 11件) 図書 (2件)
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