計画研究
本研究グループは、π造形システムにおける分子集合体の精密構造解析、外場下構造解析、時分割回折実験を通じて、その物性発現機構を構造的見地から明らかにすることを目的としている。本研究グループは、これまでに外場下の構造解析・構造変調の観測や、時間分解測定による構造の時間発展の観測を行ってきた実績があり、これらの手法を駆使し、本領域で新たに作り出されるπ造形システムの構造解析を進める。研究手法としては、硬X線による回折実験が主となるが、硬・軟X線による吸収分光法 (XAS) により、元素選択的な電子状態の観測(価数、局所構造変化)、及びX線回折による平均構造の観測との同時測定などを適宜組み合わせて行う。平成26年度は、研究開始年度であり、期間も短いことから、硬X線による回折実験、吸収分光実験等を行うための装置整備を行い、本格的な利用実験に備えた。特に、イメージングプレートを用いたX線精密構造解析装置の整備のために研究費を充当した。また、本領域のA01、A02班の研究グループとの共同研究として、反芳香族化合物単結晶への圧力印加による格子定数の変化の測定、ソフトマター試料における温度相転移条件下での時間分解X線回折測定などを開始し、初期的な検討が始まった。さらに、本研究グループが以前から取り組んでいた、時間分解X線溶液散乱測定の研究成果を取りまとめて論文とし、この論文は平成27年2月にNature誌に掲載された。この時間分解測定手法は溶液条件での超高速分子構造変化の測定を実現するものであり、今後、π造形システムのDynamic-π機能の発現機構の研究に向けて、有力な研究ツールになるものと期待している。
2: おおむね順調に進展している
平成26年度は、主に装置整備により本格的な利用実験に備えることを目的とし、イメージングプレートを用いたX線精密構造解析装置の整備を確実に実行したことから、平成26年度当初の研究目的は順調に達成したと考えている。これに加えて、年度当初の目的には記載していないが、本領域のA01、A02班の研究グループとの共同研究の検討を開始し、反芳香族化合物単結晶への圧力印加による格子定数の変化の測定、ソフトマター試料における温度相転移条件下での時間分解X線回折測定などの予備的な測定を開始したことも、重要な進展である。
平成27年度以降は、本領域のA01、A02班の研究グループとの共同研究を本格的に開始し、本領域で新たに作り出されるπ造形システムの構造解析を進める。すでにトリフェニレン骨格を持つイオン性液体の特異な物性に着目した構造研究を目指してA02班の研究グループとの共同研究を開始している。本研究の推進にあたって、平成27年度から1名の博士研究員を雇用し、研究の迅速な展開を図る。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 6件)
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