本研究グループは、π造形システムにおける分子集合体の精密構造解析、外場下構造解析、時分割回折実験を通じて、その物性の発現機構を構造的見地から明らかにすることを目的としている。本研究グループは、これまでに外場下の構造解析・構造変調の観測や、時間分解測定による構造の時間発展の観測を行ってきた実績があり、これらの手法を駆使し、本領域で新たに作り出されるπ造形システムの構造解析を進めている。研究手法としては、硬X線による回折・散乱実験が主となるが、硬・軟X線による吸収分光法 (XAS) により、元素選択的な電子状態の観測(価数、局所構造変化)、及びX線回折による平均構造の観測との同時測定などを適宜組み合わせて行う。 平成30年度は、本領域A01、A02、A03班の研究グループとの共同研究を引き続き積極的に推進した。主な共同研究先として、東工大・福島グループ、京大・関グループ、物質・材料研究機構・竹内グループ、千葉大・矢貝グループ、大阪大・櫻井グループ、名古屋大・忍久保グループ、名古屋大・竹延グループとの間で積極的な共同研究を進めた。これらの共同研究を基盤として、新しいX線実験装置の開発を進めると同時に、これらのグループとの共同研究に基づく研究成果の査読付き論文を報告している。平成30年度の主な成果としては、東工大・福島グループとの共同研究により、分子の自発的集合化で単結晶のような三次元規則構造の「液滴」を形成することを見出した成果がNature Materials誌に掲載された。また、千葉大・矢貝グループとの共同研究により、自発的に折りたたまれるポリマー材料の開発に成功した成果がScience Advances誌に掲載された。
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