研究領域 | 宇宙の歴史をひもとく地下素粒子原子核研究 |
研究課題/領域番号 |
26104002
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
井上 邦雄 東北大学, ニュートリノ科学研究センター, 教授 (10242166)
|
研究期間 (年度) |
2014-07-10 – 2019-03-31
|
キーワード | 二重ベータ崩壊 / マヨラナニュートリノ / 宇宙物質優勢 / 極低放射能 / 地球ニュートリノ |
研究実績の概要 |
a)0ν2β探索において、純化後のデータ534.5日分を蓄積し、5月の領域主催国際会議で発表する。感度が5倍程度高まり縮退構造をほぼカバーする見込みである。並行して、地球ニュートリノデータを蓄積し統計精度を改善するとともに、最新の短基線原子炉ニュートリノ実験の成果を取り込むことで系統誤差の縮小に成功している。b)累計800kgのキセノンを調達し目標量の確保に成功した。c)キセノン800kgを内包できるミニバルーンを埃対策下で再作成した。環境湿度上昇後のリークテストを経て完成する。d)観測終了時に放射線源を使った較正、その後キセノン回収・ミニバルーン撤去を実施した。回収キセノンは新規分と合わせて蒸留純化している。e)ミニバルーン撤去後、故障率の高かった外水槽の光センサーを耐水性の高い光センサーに取り替え、消防点検も実施した。赤道部の反射シート強化・光センサーの向き調整・高量子効率光センサーの使用によって、宇宙線識別効率を向上させつつ光センサー総数を約6割に減らしコスト低減を実現した。f)改修中は夜間に超新星爆発に備えた縮退運転を行い、改修後にはミニバルーンのない状態で順調に再稼働した。g)ニュートリノ世代数研究のためのサイクロトロンを使ったニュートリノ源の検討において、電力・冷却水・放射化の詳細検討を行いデザインにフィードバックした。h)測定技術の開発研究として、(1)集光ミラー開発において、要求性能を満たすプロトタイプの製作に成功、(2)高感度撮像装置の開発において、高精度でのミラーを製作し中性子のLi6への捕獲事象の撮像に成功、(3)高発光・高引火点液体シンチレータ開発において、モレキュラーシーブによる純化で透過率を大幅に改善し光収集率向上に対する要求性能を達成、(4)シンチレーションフィルムを使った小型バルーンの試作に成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画と比べて、a)純化によるバックグラウンドの低減に成功し、平成29年度以降に予定していた縮退構造をカバーする感度をすでに実現できている。b)累計キセノン量800kgの調達をすでに完了した。その他、c)埃対策下でのミニバルーンの製作、d)放射線源を使った較正・キセノン回収とミニバルーン撤去、e)外水槽の改修・メインタンクの消防点検の実施、f)カムランドの再稼働、g)サイクロトロンを使ったニュートリノ源デザインでの進捗、h)将来のための技術開発、は全て順調に前倒し気味で進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
キセノン含有液体シンチレータの純化により大幅にバックグラウンドが低減し、探索感度も期待以上に向上した。これはニュートリノ観測装置を活用した探索手法の正当性を示すものであり、今後も800kgの導入に向けて精力的に研究を進め、逆階層構造に切り込む感度を実現する。同時に、縮退構造のカバーが決定的に重要である事から技術開発をさらに進めカムランド検出器の大幅なエネルギー分解能向上に備える。また、カムランド発の地球ニュートリノ観測精度の向上とともに地球モデルの改善も実施し、地球内部のより詳細な情報をもたらす。並行して、革新的技術の涵養、物理目標の多様化、装置活用の拡大を推進し、地下素粒子原子核研究を大いに展開する。
|