a)新たに製作したミニバルーンをカムランド内に導入し、キセノンを含まない液体シンチレータで膨らませて放射性不純物レベルをカムランド自身で検証した。フィルム上のバックグラウンド量は前回の10分の1程度に抑えられていたが、液体シンチレータの不純物量が許容範囲ギリギリであったため、蒸留塔を洗浄した上で再度蒸留純化を行った。液漏れの兆候は無く、キセノンの循環導入に進み、二巡したところで745kgのキセノンを導入することに成功し、前回からほぼ倍量のキセノンでKamLAND-Zen 800を開始した。極低放射能環境を実現できたことで、0ν2β探索の有効体積は以前の3~4倍に増大しており、ニュートリノ質量の逆階層構造に切り込み、複数の理論モデルの検証が可能となった。 b)212Bi-Poの連続崩壊が単一事象と誤認された場合0ν2β探索のバックグラウンドとなるが、低放射能化によって220Rn-216Poの連続崩壊を検知することで2日にわたるvetoが可能となり、トリウム系列のバックグラウンドをほぼ全て排除することが可能となった。これは低エネルギー太陽ニュートリノ観測で問題となる208Tlの排除にも有効である。 c)今後の探索で主要なバックグラウンドとなる宇宙線による原子核破砕起源の10Cに対して、ニューラルネットを導入した波形解析によって約半分に低減することに成功した。10Cの低減にはさらにミューオン・中性子・10Cの遅延三重同時計測が有効であるが、ミューオンの大信号後のオーバーシュートが中性子検知の障害となっている。開発中の新型電子回路が持つFADCの情報を使ってオーバーシュートを補正するフィードバックをかけることに成功し、新型電子回路の小型化・低ノイズ化が進展した。 d)原子炉停止期間の地球ニュートリノ観測を安定的に継続した。
|