現在の物質優勢の宇宙を説明するにはCP対称性の破れに加えて粒子数の保存則の破れが必要である。レプトン数保存則の破れが物質だけの宇宙を作ったというレプトジェネシスシナリオが有力と考えられており、本研究は、レプトン数保存則の破れに対応するニュートリノのマヨラナ性を検証を目指している。そのために、48Caのニュートリノを放出しない二重ベータ崩壊(0νββ崩壊)の研究を推進した。具体的には48Ca同位体濃縮技術の実用化と、高分解能蛍光熱量検出器の開発を進めた。並行してCANDLES装置を用いて48Caの0νββ崩壊の観測を進め、将来数meV領域までのマヨラナ性の検証を可能にする実験へ成長することを目指した。48Caの濃縮:自然存在比が0.19%と非常に低い48Caを2%以上に上げるための、電気泳動法を基礎とする新しい手法(MCCCE法)で濃縮度を高め、量を増やす開発研究 を進めた。泳動路を構成するBNを10mmから20mmに厚くし、装置の改良とパラメーターの探索を進めた結果、濃縮度でほぼ100倍の48Ca/40Ca比で15%を達成した。目標をはるかに超える結果が得られた。48Ca濃縮同位体を購入し、クロスチェックを行ってこの結果の正しさを確認した。理論的考察からBNを厚くすることで更に高い濃縮度が期待できることも示した。新しい濃縮技術が誕生したと言える。蛍光熱量検出器開発:CaF2結晶の低温での特性を調べるために韓国のグループの冷凍機システムで特性を調べ た。熱と蛍光の両方を測定できることが示され、研究の可能性が明確になってきた。連続する崩壊を捉えることで位置依存性を消せば高い分解能が得られることを確認した。二重ベータ崩壊測定:建設した遮蔽システムで、γ線と中性子起源のバック グランドをほぼ2桁減少させ、0νββ崩壊の観測を進め、48Caで世界で一番良い感度を達成した。
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