研究領域 | 宇宙の歴史をひもとく地下素粒子原子核研究 |
研究課題/領域番号 |
26104006
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
作田 誠 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (40178596)
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研究分担者 |
鈴木 英之 東京理科大学, 理工学部, 教授 (90211987)
池田 一得 東京大学, 宇宙線研究所, 助教 (90583477)
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研究期間 (年度) |
2014-06-27 – 2019-03-31
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キーワード | 宇宙物理 / 超新星爆発 / 超新星背景ニュートリノ / 星形成 |
研究実績の概要 |
実験研究:超新星背景ニュートリノ(SRN)発見のための本研究の要は、ガドリニウム(Gd)水溶液から放射線不純物を高精度に取り除く循環装置の構築である。そのため1)Gd溶液をラジウム(Ra)除去樹脂に通すためのシステムを構築した。システムには真空膜脱気フィルター、イオン交換樹脂、殺菌ランプ等の装置が含まれる。2)Gd溶液に純空気を混合し、溶液中Raが崩壊して生成されたラドン(Rn)を測定するためのガスラインとRn検出器の構築を行った。これには、気液混合装置、高感度ラドン検出器の他、極低レベルのRn濃度を測定するための活性炭を用いたRn濃縮装置が含まれる。3)1)2)のシステムを接続して、全体の試運転を行った後、本番の測定でのバックグラウンドを理解するためシステムの各構成要素からのRn放出量を測定した。4)解析面では、JPARC中性子実験施設において中性子捕獲Gd(n,γ)反応の精密γ線エネルギーデータを取得した。エネルギー分布を2つの計算Geant4(標準版)とGLG4Sim版と比較した。標準版よりGLG4Sim版の方が離散ピークや全体のスペクトルは改良が見られ、全体のスペクトルの形は40%程度の一致であることが分かった。 理論研究:銀河の金属量進化などを考慮したSRNのエネルギースペクトルの研究を行った。特にブラックホール形成に起因する成分も含め、SRNに対する金属量進化、星形成率密度、衝撃波復活時間、状態方程式の影響を調べた。その結果,星形成率密度の影響は低エネルギー成分に現れ,衝撃波復活時間と状態方程式の影響は高エネルギー成分に現れることがわかった。Gdを入れたスーパーカミオカンデでは、10-18MeV領域で4-9事象/10年が期待される。SRNの予想スペクトルはデータベースとして公開した。また超新星ニュートリノの数値シミュレーションに必要な状態方程式のデータベースも作成・公開した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
H26年度実施計画では、以下のように書いた: 実験研究:ガドリニウム化合物溶液用ラドン検出器を製作する。このシステムでは、ガドリニウム化合物を約Ⅰ立方メートルの水に溶かし、その際に混入した不純物を取り除く前処理を行った後、溶液から湧き出してくるラドンを測定する。
理論研究:これまでの超新星背景ニュートリノの理論計算をより現実的なものへアップデートするために実際の質量分布を元に、さまざまな質量の星の爆発で放出されるエネルギースペクトルの計算を行う。
本年度の研究実績の概要で本年度の成果を述べた通り、これらは十分に実施されたと言える。
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今後の研究の推進方策 |
実験研究:1)昨年度に構築した液体中のラジウム濃度測定システムを用いてガドリニ ウム溶液中のラジウムを除去する樹脂のテストを行う。具体的な計画は下記の通りである。i) 系からのバックグラウンドを測定する。ii) ガドリニウム除去樹脂の候補自身から バックグラウンドを純水を用いて測定する。iii) ガドリニウム溶液中のRa濃度を測定 する。iv) Ra除去樹脂を通した後のガドリニウム溶液のRa濃度を測定する。v) 候補となる樹脂それぞれに4を繰り返し、必要であれば業者と樹脂開発する。
2)Gd(n,γ) [天然Gd,155Gd,157Gd]反応解析については、Ge半導体検出器の較正を進め、Gd(n,γ)反応からのE>0.2MeV のガンマ線エネルギー分布の基礎データを提供する。さらに、Gd(n,γ)核反応モデル(現行Geant4)をさらに改良し、データと計算モデルの一致精度を改善する。
理論研究:昨年度は、中里が中心に作成した超新星ニュートリノデータベースのデータ(さまざまなモデルから期待される超新星ニュートリノのエネルギースペクトル)と、観測などから示唆されている星形成率や金属量の進化モデルを組み合わせ,超新星背景ニュートリノのスペクトルを計算した。今年度は,銀河形成の数値シミュレーションなどの結果も考慮したモデルについても、超新星背景ニュートリノのエネルギースペクトルを計算し,モデル依存性を調べる。
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