研究領域 | 宇宙の歴史をひもとく地下素粒子原子核研究 |
研究課題/領域番号 |
26104008
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
竹内 康雄 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (60272522)
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研究分担者 |
伏見 賢一 徳島大学, 大学院ソシオ・アーツ・アンド・サイエンス研究部, 教授 (90274191)
関谷 洋之 東京大学, 宇宙線研究所, 准教授 (90402768)
竹田 敦 東京大学, 宇宙線研究所, 助教 (40401286)
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研究期間 (年度) |
2014-07-10 – 2019-03-31
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キーワード | 低放射能 / ラドン / NaI / 純水 / バックグラウンド / 地下実験 / 素粒子実験 / 暗黒物質 |
研究実績の概要 |
今年度は、主に、1. 極微量放射性不純物の測定・除去、2. 超高感度放射性物質スクリーニングシステム構築、3. 情報発信システムの構築、4. 研究会での情報の共有、に取り組んだ。 1.に関して、NaI(Tl)検出器結晶の高純度化を進めるため、226Raの除去とカリウムの対策を行った。平成28年2月に直径10.16 cm、高さ7.62 cmの超高純度NaI(Tl)検出器を完成させ、神岡地下実験施設において低バックグラウンド測定を行った。その結果、DM-ICEと同等の低バックグラウンド環境を達成することに成功した。 2.に関して、H27年度から、神岡宇宙素粒子研究施設の地下実験室A(LAB-A)の共同利用を開始し、システムの構築を始めた。まず、2.5mx12m程度のスペースの床に帯電防止シートを敷設し、透明シートで覆い、HEPAフィルターを設置し、クラス10相当の清浄度のクリーンな環境を構築した。その後、3種類の分析装置の構築を始めた。 3.に関して、既存の海外の放射能データベース(radiopurity.org)の開発者と情報交換を行い、本新学術研究用の放射能データベースの構築を進めた。データベースの基本構造について、より扱いやすい構造を定義し、CSV形式のファイルによる一括uploadを実現するスクリプトを開発した。 4.に関して、第2回「極低放射能技術」研究会を2016年3月に徳島大学に於いて開催し、現行の各実験グループおよび実験系の各公募研究に関連する低放射能技術に関する問題や研究の進捗などに関して議論した。各研究グループの最先端の問題点なども議論するために、昨年度と同様に研究会の内容は一般には非公開とした。今回の参加者は58名であった。来年度も継続してこのような機会を持つ予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、1.極微量放射性不純物の測定・除去、2.超高感度放射性物質スクリーニングシステム構築、3.情報発信システムの構築に取り組む計画であった。この目標に対して、各種の要素技術の開発や装置の準備など、おおむね順調に進展していると判断する。 1.について、今年度の計画通り、超高純度NaI(Tl)検出器を完成させ、神岡地下実験施設において低バックグラウンド測定を行った。その結果、電子換算エネルギー20 keVにおける計数率は7/day/keV/kgとなった。完成したNaI(Tl)に含まれる放射性不純物の濃度は、ウラン系列については約3 ppt、トリウム系列は1 ppt以下の超高純度になった。 2.について、今年度の計画通り、H27年度から地下サイトに実験室の確保ができた。環境の整備も順調で、クラス10相当のクリーンな環境を構築した。3種類の分析装置の開発には時間を要している。ラドン分析装置は、80Lラドン検出器、1Lラドン検出器、Raspberry Piを用いたデータ収集システム、冷凍機、等を用いたテストベンチを構築中である。今年度は冷却トラップを用いた純空気中及び純アルゴン中のラドンの予備的な吸着試験を行った。表面α線分析装置は、既存装置を移設し、地下実験室A (LAB-A)での装置の立ち上げと動作確認を行った。LAB-Aで試験運転を行った所、想定外のノイズが存在する事が判明し、対策が必要な状況である。装置の移設前には見られなかったのでLAB-Aの環境に因るものであるかどうか調査をすすめる。シンチレータ結晶の内部不純物分析装置は、装置の設計と構築が終わり、今年度シールドの構築を行った。来年度からの測定に向けて準備が整った。 3.について、本新学術研究用の放射能データベースの準備が整い、データ入力が可能な状態になった。現在、試験サーバーで運用テストを行っている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、坑内での各種放射能分析装置の構築、データベースでの公開に向けて、各種要素技術の開発に取り組む。また、NaI(Tl)結晶の更なる高純度化に向けては、昨年度の研究で課題となっていた40Kの濃度については、カリウムを除去するための対策を施した結果、低バックグラウンド測定のエネルギースペクトルには明瞭なピークがみられなくなった。一方で、検出器周辺素材を起源とする210Pbの影響があり、210Pbによるバックグラウンドが主となっている。この影響を除去するために、周辺物質(ハウジング素材、反射材)の高純度化と材料選定を今後行う。 さらに、領域内で低放射能技術に焦点をあてた研究会を今後も定期的に主催し、最先端の低放射能技術の共有や、新たな連携を行う可能性を探る試みを継続する。
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