研究領域 | 3D活性サイト科学 |
研究課題/領域番号 |
26105004
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
山田 容子 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 教授 (20372724)
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研究分担者 |
久保園 芳博 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (80221935)
笠原 裕一 京都大学, 理学研究科, 准教授 (10511941)
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研究期間 (年度) |
2014-06-27 – 2019-03-31
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キーワード | 有機半導体 / 結晶成長 / 界面制御 / ドーピング / 電気二重層 / 超伝導体 |
研究実績の概要 |
電極・基板表面の有機材料の結晶構造は、電極への電荷注入や薄膜全体の結晶成長、ひいては有機電子デバイスの性能に影響する。本研究は溶液プロセス可能な低分子結晶性有機材料の開発、溶液プロセスや蒸着による低分子有機薄膜結晶構造制御を行い、界面や薄膜の有機ナノ結晶の構造を制御する。またA02手法班との連携により、錯体金属・吸着元素を利用したドープ原子ホログラフィーや、表面・界面ホログラフィーを活用し、原子レベルでの電極/有機層界面やp/n接合界面の構造を明らかにする。この知見を基に有機トランジスタや太陽電池デバイスの高性能化をA03理論班とともに図る。さらに界面制御に電気二重層の導入やナノカーボンや無機の二次元物質への展開も計画している。これらを用いて、界面超伝導、強磁性、スピン流制御などの新機能の探索と高制度化を行う。 これまでに山田グループは、ペンタセンジケトンに代表されるアセンジケトン前駆体を用いて塗布型低分子有機薄膜トランジスタや有機薄膜太陽電池に展開してきた。しかし薄膜中での結晶成長過程はまだ不明である。そこで、東京大学・高橋教授、白澤助教、東京学芸大学フォグリ助教(いずれもA07班)との共同研究により、ペンタセンジケトンからペンタセンへの薄膜中での光変換反応における、薄膜の厚さ・密度・表面の粗さ・結晶性などの継時変化を明らかにすることを目的とした、光前駆体法によるペンタセン薄膜形成過程の時分割X線反射率測定を用いたその場観測を開始した。 この他、分担研究者の久保園グループは有機電界効果トランジスタの特性向上のための3D活性サイト解析と炭素並びに無機系超伝導体の合成と3Dホログラフィーを、笠原グループは電気二重層による物性制御に関する研究を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
山田らが東京大学・高橋教授、白澤助教、東京学芸大学フォグリ助教(いずれもA07班)との共同研究により、ペンタセンジケトンからペンタセンへの薄膜中での光変換反応における、薄膜の厚さ・密度・表面の粗さ・結晶性などの継時変化を明らかにすることを目的とした、光前駆体法によるペンタセン薄膜形成過程の時分割X線反射率測定を用いたその場観測を開始した。この他、北海道大学・郷原教授G(A08班)、阪大蛋白研・鷹野助教(A11班)との共同研究によりグラフェンシート上でのパラジウムポルフィセン1分子観測に関する3次元原子分解能回折イメージングの共同研究を開始した。 久保園らは有機薄膜ならびに単結晶を使った電界効果トランジスタ(FET)デバイスの作製評価を行った。本年度は[8]フェナセンと[10]フェナセンをターゲットにしてFETの作製と評価を進めた。フェナセン単結晶が絶縁膜界面上でどのような結晶構造を取るかは、デバイスの特性を深く解明するために重要である。そのため、Spring-8において、大阪大学の若林准教授(A07班)と絶縁膜上での単結晶X線CTR散乱を測定した。また金属ドープしたFeSe系の超伝導体に関して、金属原子挿入量に対する超伝導転移温度(Tc)とFeSe面間距離の変化を詳細に調べて、金属挿入量に対するTcの変化が、金属の占有する位置と密接に関係していることを明らかにした。 笠原らは金属ドープしたFeSe系の超伝導体に関して、金属原子挿入量に対する超伝導転移温度(Tc)とFeSe面間距離の変化を詳細に調べて、金属挿入量に対するTcの変化が、金属の占有する位置と密接に関係していることを明らかにした。無機磁性半導体(In,Fe)Asを含む量子井戸InAs/(In,Fe)As/InAsをチャネル材料として用いた電気二重層トランジスタを作製し、電界による強磁性転移温度TCの制御に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
26年度に開始した様々な共同研究を深めつつ、有機ナノ結晶・有機デバイス界面の3D活性サイト科学の構築に関する研究を展開する。 山田らは溶液プロセスによる有機半導体薄膜中の結晶成長のメカニズムに関する研究を進めるとともに、界面における有機分子と電極との相互作用についての研究を展開する。 久保園らは蒸着によるフェナセン類の有機デバイスの構造と特性に関する相関に関してさらに研究を進めると同時に、アルキル基の影響についても系統的に研究を展開する。一方無機系超伝導体の超伝導転移温度における金属ドーピングの影響について、奈良先端大・大門教授(A06班)、東北大学・林准教授(A05班)のグループとそれぞれ連携して解明していく。 笠原らは、酸化物単結晶(SrTiO3、KTaO3)を用いた電気二重層トランジスタを作製し、そのトランジスタ特性を確認した。電界誘起超伝導がすでに確認されている物質群であるが、電界による発現機構や蓄積電荷の厚みなどは理論計算による見積りしかなく、実験による直接決定がなされていない。大阪大学・若林准教授(A07班)との共同研究を開始し、電荷厚みや界面活性サイト構造の決定手法としてのCTR散乱実験を行う。
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