計画研究
電極・基板表面の有機材料の結晶構造は、電極への電荷注入や薄膜全体の結晶成長、ひいては有機電子デバイスの性能に影響する。我々は、低分子有機薄膜結晶構造制御を行い、界面や薄膜の有機ナノ結晶の構造を制御すること、A02手法班との連携により、原子レベルでの電極/有機層界面やp/n接合界面の構造を明らかにすること、この知見を基に有機トランジスタや太陽電池デバイスの高性能化をA03理論班とともに図ること、さらに、界面制御に電気二重層の導入や、ナノカーボンや無機の二次元物質への展開も計画し、界面超伝導、強磁性、スピン流制御などの新機能の探索と高制度化を行うこと、を目的に研究を進めている。山田らは溶液プロセスによる有機半導体薄膜のナノ構造制御と電気特性の相関を明らかにするために、種々の化合物の合成と溶液プロセスによる低分子薄膜作成及び薄膜ナノ構造制御、有機薄膜電界効果トランジスタ(OFET)法による電荷移動度や有機薄膜太陽電池特性の性能評価を行った。久保園らは、新しい有機物質(チオールならびにピロールを骨格に取り込んでいる)を使った薄膜ならびに単結晶FETデバイスを作製し、移動度で5 cm2 V-1 s-1を達成した。また金属原子を二次元層状物質にインターカレーションすることによって、超伝導体を作製した。さらにCaxSr1-xC8と表記できる新しい超伝導物質(GIC超伝導体)を作製し、これの高圧での構造ならびに超伝導特性を調べ、8.3 GPa付近までの領域でTcが正の圧力依存性を示すことを見いだした。笠原らは東大・岩佐G(連携研究者)との共同研究を行い、フラーレン超伝導体A3C60(A:アルカリ金属元素)におけるモット絶縁体-超伝導体転移近傍における超伝導状態を調べるために上部臨界磁場測定を行った。
1: 当初の計画以上に進展している
研究代表者及び分担者は、それぞれ領域内で活発に共同研究を展開しながら、研究を進めている。山田らは、5,15-位にトリイソプロピルシリルエチニル(TIPS)基を導入したTIPS-BPを合成し、Drop cast法とDip coat法で薄膜を作製し薄膜結晶構造と電気特性を検討した。時間をかけて薄膜作製できるDip coat法では、分子間の相互作用が大きいBrickwork型の構造をとり、1 cm2 V-1 s-1を超える高い移動度を示した。また結晶構造と有機薄膜太陽電池の開放電圧(VOC)の関係についても詳細に検討した。一般にVOCはドナー材料のHOMOエネルギーレベルとアクセプター材料のLUMOエネルギーレベルにより規定される。しかし、溶液中で同じ酸化還元電位を有するC6-DBTAとEB-DBTAをi層のp材料に用いると0.44VもVOCが異なりその結果PCEも2.5倍程度差が出ることを見出した。この他、北海道大学・郷原教授G(A08班)、広島市立大・鷹野教授(A11班)、東京大学・白澤助教、東京学芸大学高橋教授(A03班)、フォグリ助教(公募班)、東京大学・吉信教授(連携研究者、H29年度より公募班)との共同研究等を継続中である。この他、岡山大久保園グループでは、薄膜及び単結晶FETや超伝導体の化学ドーピング・電界効果ドーピングに関して多くの知見が得られ、奈良先端大・松井准教授(A06班)、林グループ(A05班)と共同研究を推進中である。京大笠原グループではフラーレン化合物超伝導体における超伝導-モット絶縁体転移と上部臨界磁場に関して、画期的な成果が得られた。
ディップコート法による異方性結晶性有機薄膜の簡便な作製法を開発して、領域内共同研究により薄膜構造と電荷移動どの置換基効果を検討する。また金基板上での前駆体の反応メカニズムを原子レベルで明らかにする。フェナセン系薄膜ならびに単結晶電界効果トランジスタ(FET)の高移動度の起源を明らかにするために、[6]フェナセンから[9]フェナセン単結晶の構造解析を行う。方法としては、Laue法による単結晶構造解析を試み、得られたバルクの結晶構造をもとに、これまでに測定してきたそれぞれの単結晶のCTR散乱実験結果の解析を進める。これによって、FET特性に関係したチャネル部分の構造を最終的に決定できる。また、新規なフェナセン系物質の開発と、トランジスタ応用研究を進める。トポロジカル絶縁体、トポロジカル超伝導、二次元層状物質の光電子ホログラフィーならびに蛍光ホログラフィーを行って、金属周り局所構造の精密決定を行う。とくに、元素のドーピングによって超伝導が出現したり、トポロジカルな特性が変化する物質系において、ドーピング元素の構造ならびに電子状態を知ることは極めて重要である。また、引き続き高温超伝導体の探索を進め、新物質を3D活性とサイト科学に持ち込むことを追及する。二次元層状物質の電界誘起超伝導の研究を進め、多様な二次元層状物質で、超伝導転移を実現する。とくに、圧力下での電界誘起キャリアドーピングを行って、新規な超伝導相を実現する。なお、電界効果キャリアドーピングされたチャネル領域の構造を捉える手法の開拓を行う。また電気二重層のCTR散乱によって同定された界面構造をもとに、電気二重層トランジスタデバイスによる機能探索を加速する。具体的には、カーボンナノチューブにおけるスピン輸送の電界制御、トポロジカル物質相の電界制御、電気二重層を用いた新奇超伝導デバイスへの展開、を対象とした研究を実施する。
すべて 2016 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (12件) (うち国際共著 4件、 査読あり 12件、 謝辞記載あり 12件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 4件、 招待講演 6件) 備考 (4件)
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