研究領域 | 3D活性サイト科学 |
研究課題/領域番号 |
26105005
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐々木 裕次 東京大学, 新領域創成科学研究科, 教授 (30344401)
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研究分担者 |
久保 泰 独立行政法人産業技術総合研究所, 創薬プロファイリング研究センター, 副研究センター長 (10178030)
関口 博史 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門, 副主幹研究員 (00401563)
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研究期間 (年度) |
2014-06-27 – 2019-03-31
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キーワード | バイオ計測 / X線 / 中性子 / 1分子 |
研究実績の概要 |
直径5-6mmの巨大ヘモグロビン(Hb)単結晶の作製に成功し、蛍光X線ホログラフィー測定にも成功した。蛍光X線ホログラフィーの第一回実験(KEK PF-BL6C)での最大の成果は、2日間X線を照射しても、その後の測定したタンパク質単結晶からの回折パターンに乱れがなかったことが確認できた点である。問題点としては、タンパク質Hb巨大単結晶をマウントするホルダーが信号がバックグランドになっていることが判明したので、今後、色々な形のホルダー(材質も含めて)を評価すべきだと分かった。また、上記のようにヘモグロビンのサンプルを取り扱うので、ヘモグロビンと言えば、一番有名な研究に「アロステリック効果」という生物科学の中でも一番影響力があって、かつ実質的に証明されていない現象の基礎研究に使われた中心タンパク質分子である。そこで、このHbをX線1分子追跡法のサンプルにすることにし、その1分子計測を開始した。予備的ではあるがR-R2転移というアロステリック転移に近い構造変化を捉えることに世界で初めて成功した。X線1分子追跡法を用いることで、無機材料系の過飽和現象のナノスケールダイナミクスの測定に成功した。この成果は、第1回シンポジウムの学生賞(大門賞)を佐々木研D1の松下君が受賞。また、そのタンパク質バージョンの1分子計測にも成功し、過飽和現象における新しい物性研究の展開が期待される。X線1分子追跡法を用いた他のサンプル系としては、今まで分子内の活性サイトが不明であった天然変性タンパク質分子の活性中心と考えられる部位の決定とその動的挙動を捉えることに成功した。タンパク質分子の任意の場所に金属元素及び金属クラスターを入れる技術が確立すれば、蛍光X線ホログラフィーのサンプル対象になりえるので、その技術開発の検討を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
蛍光X線ホログラフィーの第一回実験(KEK PF-BL6C)で、2日間X線を照射しても、その後の測定したタンパク質単結晶からの回折パターンに乱れがなかったことが確認できた。この確認は今後の実験を大きく左右するものであり、力強いスタートを切ることができたと評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
初年は、巨大生体分子の単結晶から蛍光X線ホログラフィーが技術的に問題なく対応できる(破壊プロセスが確認されなかった)という確認が完了した。来年度は解析まで持ち込んで論文化を急ぎたい。また、PSIIの巨大結晶化も現実的な実験として、蛍光X線ホログラフィーの実測を早急に進めたい。また、この計測技術が本当に生物学的に未知な課題(例えば金属の価数評価)を解決することのできる唯一の方法論に成り得るのかという議論もしっかり進めていきたい。もう1つのバイオ計測技術として、量子ビーム1分子計測法を進めることとした。計算科学や電子顕微鏡技術との連携という意味でも、「1分子計測」は非常に重要な技術であり、多くの生体高分子系で今後より汎用的な方法論として普及させていきたい。特に、新規な技術的課題に対しては、本新学術研究領域が行われる5年間の前半部分で実現確立して、後半では、より実践的に「3D活性サイト」決定法として利用・普及させていきたい。今年度の1分子計測成果を参考文献として加える。
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