研究実績の概要 |
研究グループでは、高精度で高効率な第一原理電子状態計算手法とプログラムを開発しつつ、ナノ触媒や半導体デバイス、酸化物などの具体的な物質の研究を行っている。平成28年度の研究について以下のような成果があった。1) ZnSnAs2ベーススピントロニクスマテリアルデザインに関して、ZnサイトにV, Cr, Mn, Fe, Co, Niと3d遷移金属をドープすることでそのキュリー温度を見積もった。その結果、ZnサイトにV, Crをドープした系において強磁性状態が安定である事がわかった。 2)グラフェン担持Ptクラスター触媒の構造と反応性に関しては、格子空孔上におけるPt4クラスターの吸着構造を調べたところ、格子空孔のサイズとともにPtクラスターの吸着エネルギーが増大することが分かった。さらに各吸着構造においてCO吸着エネルギーを調べると、空孔に近いPt原子上ほどCO吸着が弱まる傾向が現れた。 3) グラフェン表面におけるナフタレン分子層の吸着構造と表面状態に関しては、van der Waals密度汎関数法によりナフタレンの吸着構造を決定し、バンド構造の詳細な解析から、グラフェンのIPSに加えてナフタレン分子層にも同様のIPSが出現し、これらの混成により吸着系のIPSが形成されることを指摘した。 4) RhドープしたSrTiO3の浅いアクセプタ準位の起源解明に関しては、VOとは共存するが隣接しないRh(6配位)は3価の状態を取り浅いアクセプタ準位には寄与しない一方、VOと隣接するRh(5配位)は1~3価の状態を取り、特に3価の状態を取った場合に浅いアクセプタ準位を生成することが分かった。 そのほか、5)X線損傷の計算機シミュレーション, 6)蛍光X線ホログラムの幾何学的画像解析, 7)第一原理オーダーN法プログラムCONQUESTへの自由エネルギー計算手法の組み込みなどを行った。
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