研究領域 | 3D活性サイト科学 |
研究課題/領域番号 |
26105012
|
研究機関 | 広島市立大学 |
研究代表者 |
鷹野 優 広島市立大学, 情報科学研究科, 教授 (30403017)
|
研究分担者 |
石北 央 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 助教 (00508111)
米澤 康滋 近畿大学, 先端技術総合研究所, 教授 (40248753)
齋藤 徹 広島市立大学, 情報科学研究科, 助教 (80747494)
兼松 佑典 広島市立大学, 情報科学研究科, 研究員 (10765936)
|
研究期間 (年度) |
2014-07-10 – 2019-03-31
|
キーワード | 活性サイト / 金属タンパク質 / ヘムタンパク質 / 構造機能相関 / QM/MM計算 / 分子動力学法 / 半経験的分子軌道法 / 密度汎関数法 |
研究実績の概要 |
本年度は、(1) 生体活性サイトの機能解明に向けた新しい分子シミュレーション技術の開発、(2)3D活性サイトの分子構造・電子状態の理論計算による精緻化、(3)金属タンパク質の機能発現要素の抽出を進めた。 (1)に関しては、金属タンパク質の計算でボトルネックとなる活性中心の電子状態計算の高速化を目指し、計算化学で頻用されている非制限型密度汎関数理論(UDFT)計算よりもコストが低い非制限型半経験的分子軌道法のUPM6に着目した。しかしUPM6法は、実験やUDFT計算とは異なる電子状態、反応経路を与えてしまう。そこでUPM6のパラメータを改良し、精度に関する問題の解決を図った (以下、UrPM6とする)。金属タンパク質のシトクロムP450, sMMOの活性部位の模倣錯体に適用したところ、UrPM6ではほぼ全ての遷移状態構造を求めることができた。さらには計算時間を約4,000分の1に短縮できた。 (2)、(3)に関しては、タンパク質中でのヘムの構造歪みに着目し、ヘムの構造と機能の相関性を解明することを目的として、ヘムの構造の統計分布解析を行った。 酸化還元酵素と酸素の輸送・貯蔵に関与するヘム蛋白質中のヘムの骨格構造から機械学習の一つであるFisherの線形判別法により機能ごとの構造分布の違いを特徴付ける構造歪みを抽出した。得られた構造歪みに沿って機能に関連するFe(II)の酸化エネルギーと酸素吸着エネルギーを密度汎関数法(PBE0/6-31G(d))により計算し、構造歪みとの相関性の有無を調べた。構造歪みは酸素吸着エネルギーと負の、酸化エネルギーと正の相関を持つことが明らかとなった。これは酸素輸送・貯蔵タンパク質は酸素の着脱が、酸化還元酵素は酸化還元が起こりやすくなることと関連付けることができ、本解析によって機能活性化に寄与する構造的バイアス因子の抽出が可能であることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、シミュレーション技術の開発及び生体活性サイトの精緻化、機能発現機構の解明に遂行できたため。
|
今後の研究の推進方策 |
平成29年度の研究を通じて、シミュレーション技術の開発及び生体活性サイトの電子状態、金属タンパク質の機能発現機構や構造機能相関の解明を進めることができた。平成30年度はこの成果をさらに発展させ、デザインに繋げたいと考えている。
|