研究領域 | 3D活性サイト科学 |
研究課題/領域番号 |
26105014
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
筒井 一生 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (60188589)
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研究分担者 |
武田 さくら 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 助教 (30314537)
角嶋 邦之 東京工業大学, 工学院, 准教授 (50401568)
若林 整 東京工業大学, 工学院, 教授 (80700153)
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研究期間 (年度) |
2014-07-10 – 2019-03-31
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キーワード | 半導体 / 不純物 / 光電子ホログラフィー / 光電子回折 / シリコン / 砒素 / 二硫化モリブデン |
研究実績の概要 |
半導体のシリコン(Si)、窒化ガリウム(GaN)、層状物質半導体の二硫化モリブデン(MoS2)等の活性サイトになる不純物の構造を光電子ホログラフィー等の本領域の評価手法を用いて明らかにし、デバイス高性能化のプロセス技術を提案することを目的としている。 Si中にドープした不純物の砒素(As)では、As原子からの光電子ホログラフィーの測定実験に成功し、原子配列の再生像を得た。Asは、三種類の異なる化学結合状態を持つ状態で存在し、それぞれの状態を識別して構造解析を進めた。領域内の理論班との連携を通して、シミュレーションによる検討を進め、結合エネルギーの高い方から、それぞれSi結晶の格子置換位置の電気的に活性なAs、As原子が複数集まるクラスター構造をとって不活性化したAs、およびSiとAsの混合状態で局所的に結晶性が乱れた非晶質に近い構造をとる不活性化したAsであることを推測できた。本計画研究の目標の中で非常に重要な成果となり、現在、論文投稿中である。 GaN中の不純物の評価の研究においては、分子線エピタキシーでドーピング条件の異なる評価試料を作製する準備を進めたとともに、既存のMO-CVD法によるエピタキシャル基板を用いてp型層のマグネシウム(Mg)不純物の軟X線光電子分光の予備実験を行い、ホログラフィー実験が可能である見通しを得た。 MoS2の薄膜の特性制御の研究では、高純度スパッタ法の成膜に硫黄蒸気雰囲気、H2S雰囲気、還元性雰囲気での熱処理を組み合わせることで高純度化および硫黄欠損の補償によって結晶性を顕著に向上できた。その結果、光電子によるバンド分散評価が可能となり、結晶性とその特徴を捉えることにも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Si中のAsでホログラフィー解析から原子配列像の再生まで成功したのは大きな成果である。原子配列像の上では、特定の近接サイトで像が消失する、あるいは像が線上に分散する等の新しい構造的特徴を見出し、それをもとにAsのクラスター構造に関する議論も進めた。時期的には当初の予定より時間的に遅くなった面はあるが、成果としては確実に進展している。領域内の理論班との連携による理論計算、シミュレーションも開始している。 並行して進めているGaNやMoS2に関しては、本領域の手法を適用して直接新しい知見を得るにはまだしばらく時間がかかりそうである。しかし、それらを実現する予備実験は進んでいる。また、その過程で、MoS2のバンド構造の評価が予想以上に進んだことも挙げられる。 以上より、総合的には概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
Si中Asでは、ホログラフィーから得られるクラスター構造の特定を進める。現在はまだ複数の構造に対する可能性を示唆できる段階であるが、試料の熱処理条件やドーピング条件を変えることで異なる構造のクラスターを高濃度に作り出し、その構造解析を進めることで確実な知見を得ることをめざす。 また、As以外にも重要であるBおよびPについても、光電子ホログラフィーの可能性を探る。Bについては、初期の実験で、Si結晶のプラズモンロスピークの影響を強く受ける困難性が明らかになり、Pでも同様の影響が考えられているところであるが、光電子スペクトルからの信号解析の手法の改良も含めて精度の高いバックグラウンド除去法を探索し、有効なホログラムの取得に挑戦する。 GaN中不純物に関しては、MBE法での評価試料の作製を引き続き進め、非平衡度の高い状態での不純物ドーピングとその状況でのクラスタリングなども調べて行く。 MoS2に関しては、グレインサイズの大きな薄膜の成長を目指し、原子ホログラフィーでまず母材のMoS2の原子構造を観測することを目指し、続いて、インテンショナルな不純物ドープによりその占有サイトの観測も試みたい。
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