計画研究
(1)大気CO2がマントルに吸収される速度の評価:本研究は、原始地球を実験室で再現し、原初大陸表層の岩石種と原始大気の組成を再現することから始めた。そして、温度低下によって出現する原始海洋の化学組成を実験から見積もり、中性化した海洋下における中央海嶺熱水循環によって冥王代中・後期から大気のCO2がマントルへ輸送されたとするモデルに基づき実験、分析を進め、ほぼ最終段階まで詰めた。しかし、原初大陸の分布面積の計算には、室内実験に基づくアノーソサイトの風化速度と物質循環の速度が与える海洋のpH変化速度の見積もりが最後の鍵となり、これを次年度に持ち越す。(2)生命誕生に先立つ化学進化の地球化学的環境の再現:生命誕生に先立つ化学進化を進めるA02班を以下の3点でサポートした。①還元的リアクターにおける化学反応の研究、②酸化的リアクターにおける化学反応の研究、③合流リアクターにおける化学反応の研究)。具体的には、冥王代の地球表層環境を復元し、多様な表層環境それぞれを構成した、岩石、鉱物、多様な大気環境、水環境を特定し、学際研究のブリッジの役割を果たした。特に間欠泉と周辺の酸化場が生命誕生場の最有力候補地であるとの結論に達した。更に触媒となる岩石と鉱物を特定し、A02とA03班へ情報を伝え、それぞれ室内実験を順調に開始した。(3)他の班とのリンク:学際研究を牽引するにあたって、各班とのディスカッションを進めた。たとえば、A02班とは、ボトムアップの前駆的進化の化学実験の出発実験材料を吟味してA01班の低温NH3合成実験と予測結果を見せて意見の交流を図るなど、積極的な働きかけを各班に対して行った。
2: おおむね順調に進展している
(1)大気CO2がマントルに吸収される速度の評価:原始地球を実験で再現するための実験と並行して行った隕石の同位体組成の研究のまとめから、地球が、二段階で形成されたことがわかり、ABELモデルとしてまとめた。冥王代原初大気の総量と組成を計算から求め、85気圧CO2+270気圧H2O+1気圧N2=約360気圧を求めた。冥王代地球表層の原始大気の組成と量を実験的に決めるために、久城アドバイザーのコメントに従って、冥王代大気の化学組成を求める実験の概要を作った。これが次年度の実験となる。(2)生命誕生に先立つ化学進化の地球化学的環境の再現:冥王代ジルコンの包有物、隕石、及び月の地質(冥王代地球表の原初大陸のアナログ)を組み合わせ、冥王代表層環境を復元した。それらは、以下の7点が鍵になっている。①巨大陸地の存在、②そこから導かれる多様な表層環境、とりわけ間欠泉(最重要な生命誕生場の候補)、③Fe3P鉱物の存在、④原初大陸の主要構成岩石であるアノーソサイト+KREEP、⑤原初大陸に貫入・噴出したコマチアイト、⑥猛毒海洋、⑦多種多様な前駆的化学進化場と、その場所で合成された有機物が下流側で合流する場。熱水環境場は、そのような場の一つではあるが、乾湿サイクルが期待できない為にアミノ酸の重縮合は起こりえず、前駆的生命進化の場としては不適当であることを導いた。(3)原始地球表層の生命誕生場の整理と触媒科学のブレーンストーミング:生命誕生場として、自然原子炉間欠泉を提案し、間欠泉内部と表層の間の物質循環が導く「生命誕生の3ステップモデル」を提案した。今後は、間欠泉内部の各場における化学反応や触媒の種類、具体的な生命体についてさらに研究を進める。
(1)冥王代表層環境の復元:マグマオーシャン固化後の地球表層で創られたと予測される原初大陸の第一原理計算と、マグマの結晶分化作用、対流による層状構造の破壊の計算と、島弧マグマのマグマ溜り内部で形成されるアノーソサイトの研究を組み合わせて現実的な原初大陸形成モデルを構築する。また、変形実験を基に原初大陸の構造浸食の物理メカニズムの解明に取り組む。(2)太陽系の諸岩石惑星の全岩化学組成の決定:原始地球形成モデルのより詳細な研究のため、A05班と協力して太陽系岩石惑星と小惑星帯の隕石の密度計算を第一原理計算を用いて行う。次に惑星形成が始まる直前の円盤内部の化学組成分帯を小惑星帯内部で現在も観測される粘土鉱物線:1.8AU、有機物線:2.1AU、雪線:2.7AUを、凝縮実験と組み合わせて更に内側に金属鉄、ケイ酸塩鉱物の安定領域(岩石惑星の分布域)まで拡張し、化学組成の変成分帯モデルを創る。このモデルに基づくと、太陽から任意の地点で生まれる惑星の化学組成が求まる。初期分化によって生じる惑星の内部構造と表層環境のモデルを創り、ハビタブルトリニティ惑星の生成条件を求める。(3)原始地球表層の生命誕生場の整理と触媒化学のブレーンストーミング生命とは無数の有機化合物が関わる連続的な有機化学連鎖反応であり、生成物は常に不安定で次の反応を引き起こす。これらの反応はゲノムで正確にコードされ、私たちの体内で生命誕生から現在に至るまで絶えることなく続いている。それは原始地球が準備した表層環境の中で始まったが水中のpH、酸素や栄養塩などの化学成分、酸化還元電位等の勾配を利用したもののように思える。次なる実験をデザインする為のブレーンストーミングを常時行う。
すべて 2015 2014 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (35件) (うち国際共著 35件、 査読あり 35件、 謝辞記載あり 5件) 学会発表 (21件) (うち国際学会 20件、 招待講演 1件)
レーザー研究
巻: 43 ページ: 41-45
ci.nii.ac.jp/naid/40020334616
Geological Magazine
巻: 151 ページ: 559-571
Geoscience Frontiers
巻: 6 ページ: 95-101
doi:10.1016/j.gsf.2014.01.005
巻: 6 ページ: 103-119
doi:10.1016/j.gsf.2014.04.009
Journal of Asian Earth Sciences
巻: 88 ページ: 62-73
doi:10.1016/j.jseaes.2014.02.006
Geophysical Research Letters
巻: 41 ページ: 7501-7507
doi: 10.1002/2014GL061477
Gondwana Res.
巻: 25 ページ: 1120-1138
doi:10.1016/j.gr.2013.05.002
巻: 25 ページ: 1045-1056
doi:10.1016/j.gr.2013.03.010
巻: 25 ページ: 881-883
doi.10.1016/j.gr.2014.01.001
巻: 25 ページ: 1153-1163
doi:10.1016/j.gr.2013.05.003
巻: 25 ページ: 1057-1069
doi:10.1016/j.gr.2013.06.002
巻: 25 ページ: 910-944
doi:10.1016/j.gr.2013.03.012
Gondwana Res. 25, 1027-1044.
巻: 25 ページ: 1027-1044
doi:10.1016/j.gr.2013.05.001
Tectonophysics
巻: 623 ページ: 136-146
DOI: 10.1016/j.tecto.2014.03.026
International Geology Review
巻: 56 ページ: 1051-1071
DOI:10.1080/00206814.2014.915586
巻: 25 ページ: 945-965
doi:10.1016/j.gr.2013.03.013
巻: 25 ページ: 1070-1089
doi:10.1016/j.gr.2013.03.008
巻: 25 ページ: 884-895
doi:10.1016/j.gr.2013.09.001
Earth and Planetary Science Letters
巻: 386 ページ: 112-125
doi:10.1016/j.epsl.2013.11.001
巻: 401 ページ: 376-377
Lithos
巻: 196-197 ページ: 301-320
doi:10.1016/j.lithos.2014.02.010
巻: 25 ページ: 1108-1119
doi:10.1016/j.gr.2013.02.006
Chigaku Zasshi
巻: 123 ページ: 401-433
doi:10.5026/jgeography.123.401
Gondwana Research
巻: 25 ページ: 1090-1107
doi:10.1016/j.gr.2013.08.001
Planet. Space Sci.
巻: 104 ページ: 253-269
doi:10.1016/j.pss.2014.10.008
Astrobiology
巻: 14 ページ: 753-768
巻: 103 ページ: 262-272
DOI: 10.1016/j.pss.2014.09.007
Advances in Space Research.
巻: 54 ページ: 770-779
巻: 398 ページ: 25-36
http://dx.doi.org/10.1016/j.epsl.2014.04.044
巻: 394 ページ: 179-185
http://dx.doi.org/10.1016/j.epsl.2014.03.027
Icarus
巻: 223 ページ: 214-228
http://doi.org/10.1016/j.icarus.2014.01.034
巻: 93 ページ: 101-118
http://dx.doi.org/10.1016/j.pss.2014.03.002
Journal of Geoscience Frontiers
doi:10.1016/j.gsf.2014.01.005. 8. Referee Reading
Journal of Applied Physics
巻: 116 ページ: 043521
doi:10.1063/1.4891802
Scientific Reports
巻: 4 ページ: 5869
doi:10.1038/srep05869