計画研究
[1]原始海洋の化学組成の定量化:中央海嶺起源の熱水石英中の流体包有物の塩濃度を測定し、海洋中の塩分濃度の経年変化を得た。さらにPIXE測定により、6億年前ごろまでは現在の約5倍の高塩分濃度であったこと、さらにエンスタタイトコンドライトの塩素濃度から冥王代最初期の海洋の塩濃度が現在の約10倍だったことを推定した(Saito et al, under review)。[2]地球の起源と新たな太陽系惑星形成論の展開:隕石の重元素同位体異常の分析技術開発および測定によって、隕石試料からNdを化学分離する新しい方法、およびTIMSを用いた超高精度Nd同位体分析を完成させた(Kagami and Yokoyama, 2016; Fukai et al., 2017)。また、地球の起源を説明するABELモデルを論文化し、生命惑星誕生に最重要な必要条件のひとつであったことを結論付けた(Maruyama and Ebisuzaki, 2017)。[3]自然原子炉間欠泉モデルの深化と検証:自然原子炉間欠泉は、生命誕生場として最適な環境システムであることをまとめ、生命誕生場に必要な9つの条件を洗い出し論文として発表した(Ebisuzaki and Maruyama, 2017; Maruyama et al., under review)。[4]ガボン共和国の自然原子炉周辺地質の研究:本研究は、生命誕生場が自然原子炉であったとする我々のモデルを検証するものである。2016年7月に、ガボン共和国オクロの自然原子炉周辺地質の野外調査を約1か月間かけて実施し、ガボンの前期原生代地層が、従来考えられていたよりも少なくとも1億年古いことを示した(Sawaki et al, 2017)。[5]継続的なブレインストーミングの実施:国内外を通して合計15回のワークショップを開催した。
2: おおむね順調に進展している
進捗状況は概ね予定どおりだが、特に、複数の論文の発表は大きな成果といえる。これまで漠然としたイメージしかなかった冥王代地球とその環境は、次のように変遷したと考えられる。1)地球誕生直後(4.56Ga)から43.7億年前までの原始地球は無海洋・無大気であった。マグマオーシャンが固化すると地表の原初大陸には主要な栄養塩元素が濃集した(Maruyama and Ebisuzaki, 2017)。2)約43.7億年前に大気・海洋成分が隕石重爆撃によりもたらされ、その結果、原始海洋(超酸性、高塩分濃度、富重金属のため猛毒)がはじめて誕生し、プレートテクトニクスが機能しはじめた(Maruyama et al, in press)。3)海洋の形成と同時にプレート運動が始まり、大陸における風化・侵食・運搬作用と中央海嶺における岩石―水反応のために、海洋の中性化が急速に進んだ。原初大陸上の自然原子炉間欠泉を中核とした陸上の物質・エネルギー循環場で、最初の生物が誕生した(Ebisuzaki and Maruyama, 2017)。次の課題は、自然原子炉内部から表層までの物質・エネルギー循環系の中で、原始生命が誕生した具体的なプロセスの解明である。その為に、前駆的化学進化から誕生に至る場の岩石・水相互作用の具体的なモデルの構築とそれを実証する実験設備の開発が必要である。冥王代を代表する大陸地殻構成岩石は(1)コマチアイト、(2)KREEP玄武岩、(3)アノーソサイト、の3種類である。これらは、岩石・水相互作用によって変質鉱物を生じ、それらの鉱物上で進化する高分子有機化合物が、金属たんぱく質の起源となったと思われる。関係する重要な鉱物は、磁鉄鉱、硫化鉱物FeSなどをはじめとする9種類があげられており、これらを主要な指標鉱物として前駆的化学進化を実証する実験装置の開発を進める。
[1]生命誕生場と生命誕生のプロセスの解明:冥王代表層環境の定量的復元と第一次、第二次、第三次生命体誕生場の岩石・水相互作用の定量的評価と再現実験装置の開発(これはA03班によるOD1微生物の培養装置の開発とリンクする)を進める。[2]白馬地域の地質の継続調査と古環境の分類:微生物を含む生態系と古環境の分類を行うとともに、微生物と水の採取を行う。古環境は、岩石の種類と酸素濃度および火山ガスの有無によって次の5種類に分類する。①冥王代陸上間欠泉、②冥王代中央海嶺、③太古代―原生代大陸棚、④顕生代中央海嶺、大陸棚リフト、大陸内湖沼場、及び、⑤太古代―顕生代表層環境連続変化を占める流路系。これらの環境場の特定とそこの微生物生態系の試料を収集し、それらをA03に提供する。[3]オクロの自然原子炉の研究:22-23億年前の自然原子炉が化石化した地質体の精査を継続する。とりわけ、真核生物の化石と小規模な温泉との関係を明らかにするために、1/100規模のドローン地形図に基づいた精査を進める。[4]地球の起源と新たな太陽系惑星形成論の展開:前年度までの研究結果をもとに、Sr同位体的特徴と小惑星帯の同位体的特徴の変化(太陽からの距離に応じた変化)を比較検討して1AUの地球軌道付近に存在した地球起源物質を推定する作業を行う。[5]継続的なブレインストーミングの実施:総括班主導のワークショップに積極的に参加する。国外では、ハーバード大学(Andy Knoll, Jack Szostak)、スタンフォード大学(N. Sleep)、メキシコ国立自治大学(Antonio Lazcano)らとワークショップを新たに企画する。国内では、テーマに応じて鍵となる研究者(神戸大学・林グループ、慶応大学・金井・板谷グループ)らとワークショップを行う。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (30件) (うち国際共著 16件、 査読あり 28件、 オープンアクセス 14件、 謝辞記載あり 13件) 学会発表 (33件) (うち国際学会 8件、 招待講演 5件)
Geoscience Frontiers
巻: 8 ページ: 355~385
10.1016/j.gsf.2016.06.013
巻: 8 ページ: 299~308
https://doi.org/10.1016/j.gsf.2016.11.007
巻: 8 ページ: 275~298
https://doi.org/10.1016/j.gsf.2016.09.005
巻: 8 ページ: 253~274
10.1016/j.gsf.2016.10.005
Quaternary International
巻: in press ページ: -
http://doi.org/10.1016/j.quaint.2017.01.043
doi: 10.1016/j.gsf.2016.12.003
巻: 8 ページ: 397-407
http://doi.org/10.1016/j.gsf.2016.10.001
巻: 8 ページ: 387-396
http://doi.org/10.1016/j.gsf.2016.10.002
Geostandards and Geoanalytical Research
巻: - ページ: -
doi:10.1111/ggr.12147
Journal of Analytical Atomic Spectrometry
巻: 32 ページ: 848-857
doi:10.1039/c6ja00455e
Astrophys. J. Lett.
巻: 835 ページ: L3 (5pp)
doi:10.3847/2041-8213/835/1/L3
Geochemical Journal
巻: 51 ページ: 17-29
doi:10.2343/geochemj.2.0443
巻: 51 ページ: 81-94
doi:10.2343/geochemj.2.0446
Journal of The Open University of Japan
巻: 34 ページ: 153-157
http://lib.ouj.ac.jp/nenpou/no34/34_14.pdf
Palaeogeography, Palaeoclimatology, Palaeoecology
巻: 459 ページ: 182-197
doi.org/10.1016/j.palaeo.2016.07.008
Precambrian Research
巻: 278 ページ: 218-243
doi:10.1016/j.precamres.2016.03.018
Progress on Earth and Planetary Sciences
巻: 3(35) ページ: 1-14
doi.10.1186/s40645-016-0111-8
Icarus
巻: 264 ページ: 184-197
http://doi.org/10.1016/j.icarus.2016.09.009
巻: Icarus ページ: 43-58
http://doi.org/10.1016/j.icarus.2016.09.005
Assessing the geologic evolution of greater Thaumasia, Mars.
巻: 121 ページ: 1753-1769
DOI: 10.1002/2016JE005046
Journal of Geophysical Research
巻: 121 ページ: 916-943
DOI: 10.1002/2015JE004936.
Meteoritics and Planetary Science
巻: 51 ページ: 906-919
doi:10.1111/maps.12634
Journal of Geology and Geophysics
巻: 5 ページ: 243
DOI: org/10.4172/2381-8719.1000243.
Astrobiology
巻: 16 ページ: 143-158
"DOI: 10.1089/ast.2015.1396 "
Journal of Geography (Chigaku Zasshi)
巻: 125 ページ: 171-184
http://doi.org/10.5026/jgeography.125.171
巻: 125 ページ: 121-132
http://doi.org/10.5026/jgeography.125.121
巻: 286 ページ: 337-351
http://doi.org/10.1016/j.precamres.2016.10.003
Journal of African Earth Sciences
巻: 113 ページ: 1-11
http://doi.org/10.1016/j.jafrearsci.2015.10.009
Analytica Chimica Acta
巻: 937 ページ: 151-159
doi:10.1016/j.aca.2016.07.004
International Journal of Mass Spectrometry
巻: 414 ページ: 1-7
doi:10.1016/j.ijms.2016.12.016