研究領域 | 冥王代生命学の創成 |
研究課題/領域番号 |
26106003
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
クリーヴス ヘンダーソン 東京工業大学, 地球生命研究所, 特任准教授 (60723608)
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研究分担者 |
原 正彦 東京工業大学, 物質理工学院, 教授 (50181003)
青野 真士 慶應義塾大学, 環境情報学部(藤沢), 准教授 (00391839) [辞退]
車 兪徹 東京工業大学, 地球生命研究所, 特任准教授 (40508420)
矢野 隆章 東京工業大学, 物質理工学院, 助教 (90600651)
藤島 皓介 東京工業大学, 地球生命研究所, 研究員 (00776411)
金井 昭夫 慶應義塾大学, 環境情報学部(藤沢), 教授 (60260329)
フェアエンバック アルバート 東京工業大学, 地球生命研究所, 研究員 (40723680)
燒山 佑美 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (60636819)
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研究期間 (年度) |
2014-07-10 – 2019-03-31
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キーワード | 鉱物表面 / 化学進化反応 / ナノスケール分析 / ペプチド結合 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、生体分子(アミノ酸等)と鉱物表面との相互作用をナノスケールで定量・定性分析する手法を確立し、生命進化反応における鉱物表面の触媒作用を解明することである。本年度は、X線光電子分光(XPS: X-ray Photoelectron Spectroscopy)を用いて、酸化チタン(TiO2)表面におけるアミノ酸分子の重合化(二量体化)メカニズムを解明した。具体的には、(110)結晶面を優先的に有するTiO2粉末表面にグリシン水溶液を噴霧し、グリシン分子を粉末表面に吸着させた。その際に、100°Cに加熱したホットプレート上でグリシン水溶液を噴霧した後に1 分間静置し乾燥させる湿潤・ 乾燥サイクルを考案し、原始地球環境下における湿潤・ 乾燥サイクルを模倣した。湿潤・ 乾燥サイクル後のTiO2粉末表面のXPS測定を行ったところ、N1sコアレベルのXPSスペクトルにおいてグリシン二量体のペプチド結合(-CONH-)由来のピークが確認され、TiO2粉末表面でグリシンの二量体化が促進されることが示された。さらに、二量体化の効率は、1)湿潤・環境サイクル回数、2)TiO2粉末の粒径、3)TiO2粉末の結晶種(ルチル型、アナターゼ型)に依存することも見出した。また、国際共同研究加速基金を利用して、量子化学理論研究者のMonti博士(ICCOM-CNR, Italy)と共同研究を行い、グリシンの重合化におけるTiO2表面の触媒作用を実験と理論の両輪から解明した。 TiO2以外の鉱物として黄鉄鉱(FeS2)に着目し、FeS2表面におけるアミノ酸(システイン)の化学進化反応分析を行った。特に、A05班と連携してFeS2表面におけるシステイン分子の吸着・二量体化反応について、A06班と連携して鉄・硫黄クラスターの形成反応について分析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、X線光電子分光を用いた表面分析と化学反応分子動力学を用いた計算解析を融合し、酸化チタン鉱物表面におけるアミノ酸重合化のメカニズムを実験と理論の両面から解明した。さらに、A05班およびA06班と連携して、黄鉄鉱表面におけるシステイン分子の化学進化反応(吸着、重合化、鉄・硫黄クラスター形成)について、そのメカニズムの理解の深化を図った。以上の成果により、当初の予定通り研究が進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後(最終年度)は、冥王代の地球環境を模した条件(紫外線照射、pH制御、湿潤・環境サイクル)下におけるアミノ酸分子と鉱物表面の相互作用を包括的に議論し、鉱物表面におけるアミノ酸分子の化学進化反応(吸着、重合化、鉄・硫黄クラスター形成)メカニズムを表面科学の観点から総括する。特に、国際活動支援費等を活用して分子動力学計算を得手とする海外の研究グループとの共同研究を加速させ、冥王代における化学進化反応メカニズムを実験と理論の両面から分子レベルで解明する。これにより、バルク鉱物における巨視的な系での議論に留まっていた従来のアプローチから脱却し、化学進化研究の新しい潮流を確立する。
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備考 |
受賞:H29年度若手科学者賞 矢野 隆章
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