研究領域 | 医用画像に基づく計算解剖学の多元化と高度知能化診断・治療への展開 |
研究課題/領域番号 |
26108004
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
佐藤 嘉伸 奈良先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 教授 (70243219)
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研究分担者 |
大竹 義人 奈良先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 准教授 (80349563)
横田 太 奈良先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 助教 (60759900)
堀 雅敏 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00346206)
高尾 正樹 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30528253)
山崎 隆治 埼玉工業大学, 工学部, 准教授 (40432546)
小路 直 東海大学, 医学部, 准教授 (50514890)
多田 幸生 神戸大学, システム情報学研究科, 教授 (70135812)
菅野 伸彦 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70273620)
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研究期間 (年度) |
2014-07-10 – 2019-03-31
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キーワード | 生体生命情報学 / 情報システム / 人工知能 / 画像、文章、音声等認識 / 機械学習 |
研究実績の概要 |
1.多元データベースの拡充:人工股関節全置換術患者のCT画像(骨盤から膝までカバー)について1000例以上の画像データを収集した。さらに、これらの患者データの手術データを収集し、データベースとして組織化した。その中で、これまでの(a) 術前CT画像に加えて、(b) 片側の術後、(c) 反対側の術前、(d) 反対側の術後の4時相のCT画像の組が数十例含まれていることを確かめた。これにより、各段階で、治療評価、疾患進行の解剖モデル開発のためのデータベースが構築できた。昨年度、筋骨格機能モデル構築のため、2体の遺体実験を行ったが、今年度は8体について行い、筋肉起始部・停止部、筋線維方向のデータを得た。 2.CT画像からの筋線維モデル抽出;昨年度、筋線維モデル抽出とその検証を行うためのVisible Korean Human画像データ(凍結遺体の画像データ)を利用できるように準備したが、今年度は、0.1 mm^3ボクセルサイズの高解像度組織画像と1 mm^3 ボクセルサイズの通常の臨床CT画像のそれぞれから得られた筋線維局所方向場を比較することで、臨床CT画像から高精度に筋線維局所方向場が推定できることを確認した。この局所方向場に基づき、生体シミュレーションを行うための起始部から停止部までの筋線維走行の大局的モデルを推定する方法を開発した。さらに、20例の実際の患者CT画像に対して、有効に動作することを確認した。 3.MRI画像からの肝臓領域抽出:これまで、CT画像からの自動肝臓領域抽出法を開発したが、MR画像については、濃淡むらや正規化の基準となる骨領域抽出の難しさから、自動領域抽出が行えていなかった。今年度、自動濃淡むら補正とMR画像に適した正規化法を開発し、精度検証により良好な結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多元データベースについては、特に、1000例以上の比較的大規模なデータベースを構築できたことは大きな達成点と言える。特に、人工関節手術の両側の術前、術後の画像データと手術ナビゲーションのデータをリンクしてデータベースされたことは、病態進行、機能回復を表現する多元計算解剖モデル構築のための、意義深い進展と言える。 筋線維モデル化については、臨床CT画像から筋線維の大局的モデルを構築できる可能性が示されたことは、患者固有の高精度筋骨格機能シミュレーションを行うための大きな進展と言える。 MR画像からの肝臓領域抽出法を確立したことは、今後の、MRエラストグラフィ―(硬さ分布)画像や、病理検査情報など、多元情報を統合する上で、重要な進展と言える。
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今後の研究の推進方策 |
多元データベースとして、今年度、股関節について、病態進行、(治療による)機能回復をモデリングするためのデータベースが整ったので、来年度以降、本計画班の目的である、機能軸と病理軸を統合した計算解剖モデル構築に向けて、研究を進める。今年度、筋骨格機能シミュレーションを行うための解剖構造モデル構築のため、遺体実験データを拡充したので、このデータを、筋線維解剖モデルと組み合わせることにより、CT画像から、自動的に、起始部、停止部の各領域、筋線維走行の大局モデルを同時推定する枠組みを構築する。さらに、構築したモデルの筋骨格生体シミュレーションにおける有用性を検証する。なお、この検証は、ポスト「京」プロジェクトの生体シミュレーションのグループと共同で行う予定である。 肝臓解剖モデルにおいては、今年度、MR画像の自動領域抽出法を確立したので、硬さ分布情報、病理検査情報と統合して、肝臓機能・病理モデルの構築に向けて研究を進める。さらに、肝臓のみならず、多臓器の大規模な解析も推進する予定である。
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