研究領域 | 医用画像に基づく計算解剖学の多元化と高度知能化診断・治療への展開 |
研究課題/領域番号 |
26108005
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
藤田 廣志 岐阜大学, 工学部, 教授 (10124033)
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研究分担者 |
原 武史 岐阜大学, 工学部, 准教授 (10283285)
周 向栄 岐阜大学, 工学部, 助教 (00359738)
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研究期間 (年度) |
2014-07-10 – 2019-03-31
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キーワード | 多元計算解剖学 / 機能画像解析 / 計算機支援診断 / 知能機械 / 医用画像 |
研究実績の概要 |
1.核医学画像診断支援システム: 1)体幹部FDG-PET/CTの腫瘍の自動検出と定量解析に関しては、体幹部領域の解剖学的標準化を実現し、低解像度CT画像から深層学習を利用した臓器領域の抽出を行った。200症例を用いて標準化を行い正常集積の範囲を定め,34例から抽出した48の異常集積を解析し、65%の異常領域を自動検出した。2)PET/CT画像を用いた肺結節の良悪性鑑別手法の開発では、25種類の特徴量を算出し、Random Forestにより良性と悪性の識別を行い、良性識別正解率77%、悪性識別正解率94%と高い鑑別正解率を得た。3)乳房専用PET画像と全身PET/CT画像を用いた乳腺腫瘍および腋窩転移の自動検出手法の開発では、乳房専用PET画像から微小病変を自動検出するため、装置のノイズ特性を加味した動的閾値処理を導入し乳腺腫瘍の検出感度が30%程度向上した。 2.形態解析基礎研究: 3次元CNNを中核とする手法を提案し、CT画像における複数の解剖構造の自動抽出問題に適用した。17種類の臓器の自動抽出結果と医師による手入力を比較した結果、平均一致率79%で、2次元CNNに基づいた従来法の処理結果より10%程度の精度向上を得た。 3.筋機能解析のための筋骨格認識: 筋線維の束である筋束をモデリングし、肩甲部において従来の起始・停止に基づく筋モデルから筋束モデルへとアップデートした。また、筋認識では、脊柱起立筋の3次元認識を実現した。脊柱起立筋の自動認識では、国際連携研究により2つの方法で実現し、ともに認識率9割を超えた。 4.その他: 細胞診画像を用いた肺生検試料の良悪性鑑別では、肺癌疑いで収集された細胞診の画像の良悪性をCNNを用いて自動分類する手法を開発し、識別率75.1%を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.形態解析や機能解析を利用した多数のコンピュータ支援診断(CAD)システム構築を行い、高度な処理アルゴリズムの開発、実験、評価等を計画に従って順調に行い,有益な結果を多数得ている。 2.これらの研究成果を、国内外の学会や研究会で多数発表している。国内学会や国際学会での受賞実績もある。 3.論文化も非常に順調に進捗おり、国際連携についても計画通り順調に進捗している。 以上より、本研究課題はおおむね順調に進展している,と判断される。
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今後の研究の推進方策 |
1.体幹部FDG-PET/CTの腫瘍の自動検出と定量解析では、自動検出をSUVと統計値のみで行っており、その偽陽性削除の高度化を計画する。また、手術症例や抗癌剤治療症例において、定量値の変化と正常な変化との差異を可視化する。正常モデルの作成方法が体幹部の統計画像解析においてもっとも重要な要素であるため、その症例の選択方法や除外方法、モデル構築における変動の可能性を探り、必要な正常症例数と臓器抽出の精度の関連を明らかにする。 2.肺PET/CT画像を対象とした支援診断手法では、より高度なDeep Learning技術を導入し、さらなる精度向上を目指す。また、PET/CT画像を用いた乳腺腫瘍の自動検出手法では、乳房専用PET画像における高集積の自動検出処理を見直し、検出閾値以下の孤立性病変を自動検出できるように改良を加える。 3.形態解析基礎研究では、機能画像を含む複数の画像モダリティの情報の融合を重点的に進める。具体的には、「教師なし」の深層学習に基づく3次元医用画像の位置合わせの手法を提案・検証する。また、複数の画像情報の融合によって、がんを含む異常部位の診断の精度向上等を試みる。 4.筋機能解析については、前年度に実現した筋束モデルは従来の起始・停止と筋線維の走行を用いた骨格筋モデルを、よりミクロな視点で表現可能なものである。この筋束モデルと機械学習を用いた骨格筋認識法を統合し、骨格筋の認識から認識された筋内組織別解析までのシームレスな多元的筋認識・解析法を実現する。 5.病理画像解析では、症例の追加、前処理方法の検討、ネットワークアーキテクチャの最適化を行う必要がある。また、PET/CT画像と病理画像を併用した良悪性鑑別処理の開発ならびに画像バイオマーカー算出に関する検討を推進する。なお、全般的に、今後とも国際連携や他の計画班や公募班とも密に協力しながら、研究を進行していく。
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