研究領域 | 医用画像に基づく計算解剖学の多元化と高度知能化診断・治療への展開 |
研究課題/領域番号 |
26108009
|
研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
木戸 尚治 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90314814)
|
研究分担者 |
木村 浩彦 福井大学, 医学部, 教授 (10242596)
法木 左近 福井大学, 医学部, 准教授 (30228374)
稲井 邦博 福井大学, 医学部, 講師 (30313745)
金 亨燮 九州工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80295005)
平野 靖 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90324459)
橘 理恵 大島商船高等専門学校, 情報工学科, 准教授 (90435462)
|
研究期間 (年度) |
2014-07-10 – 2019-03-31
|
キーワード | 多元計算解剖 / 計算解剖 / 診断支援 / オートプシーイメージング / データベース |
研究実績の概要 |
本計画班では,大きく臨床画像診断を対象としたコンピュータ支援診断(CAD)に関する研究とオートプシーイメージ画像(Ai画像)と病理画像などを対象とした画像診断支援に関する研究をおこなった.コンピュータ支援診断に関する研究としては,びまん性肺疾患や肺癌を対象としたコンピュータ支援診断システムの作成をおこなった. びまん性肺疾患に対する研究としては,浸潤影や蜂巣肺などを含む肺野領域に対して関心領域をロバストに設定する手法の開発をおこなった.本手法は解剖学的知識と機械学習を用いるものであり,びまん性陰影が存在する場合でも存在しない場合とほぼ同等のパフォーマンスで関心領域(ROI)の設定を行うことが可能であった.このようにして設定されたROIを用いて,本年は深層学習(Deep Learning)の代表的な手法であるConvolutional Neural Network(CNN)を用いたパターン陰影の識別に関しての研究をおこなった.自然画像のプレトレーニングモデルを用いた結果では,びまん性肺疾患のトレーニングデータを用いたものよりも良好な結果を示すことができた.また,複数施設の画像データを用いた場合では,CNNのほうがBag-of-Features法などの従来手法の場合よりも高い識別性能を示した.肺癌を対象としたCAD研究としては,経時差分画像を用いた研究をおこなった.われわれの開発したアルゴリズムにより肺結節を精度よく検出することができた.また,肺の気流シミュレーションモデルを作成することにより肺癌などの術後機能を予測できる可能性を示した. Ai画像を対象とした研究としては,Ai画像におけるテクスチャの変化から死後経過時間の推定をおこなうアルゴリズムの開発をおこなった.また,3Dスキャナを用いた剖検臓器の画像収集をおこない表面構造解析の基礎的データの収集をした.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,臨床画像を対象とした,びまん性肺疾患や肺癌のCADに関する研究や病理画像やAi画像に関する研究を,昨年に引き続き行ってきたがおおむね順調に進展している. びまん性肺疾患の診断支援に関しては,今後複数の施設での展開を想定する必要があるが,そのために,本年はロバストな関心領域の設定方法やCNNを用いた複数施設の画像データを用いた識別手法の開発を試みた.さらに,CNNを用いたびまん性肺疾患の識別においては,一般的には大量の画像データが必要であるが,自然画像を用いたプレトレーニングを行うことにより比較的少ない症例画像でも高い識別性能を示すことができた.また肺癌に関する研究では,肺結節の検出に関する経時差分法を用いたアルゴリズムの開発や術後肺の機能評価をおこなうための気流シミュレーションモデルの作成をした.肺癌治療支援に対しては,肺癌の検出や術後肺機能評価は重要であり,これらの研究の意義は大きい.また,Ai画像に対しては,死後経過時間を推定するためにテクスチャ解析の手法を用いて死後経過時間の推定をおこなった.本研究では倫理的な問題からミニブタの死後24時間連続撮影されたCT画像を用いた解析をおこなったが,テクスチャ解析による推定時間の誤差は0.63時間程度で精度高く推定することが可能であり,今後の人のAi画像への応用に期待できる結果となった.病理画像に対しては3Dスキャナを用いた剖検された肝臓臓器の表面画像データの取得し,これを新たな診断データとして利用するための基礎的な検討をおこなった.臓器を複数箇所からスキャンし融合することでCT画像データの三次元再構成では表現できない色情報を持つ表面構造データを取得することができた.
|
今後の研究の推進方策 |
本年度まではアルゴリズムの開発やそれに用いる症例画像の収集等に研究の重心がおかれていたが,今後は臨床展開を重視した研究を行っていく予定である. びまん性肺疾患のCADにおいては,実際の臨床での運用を想定した研究を推進していく予定である.そのためには,多施設における多数症例に対する適用が重要であるが,本年度に研究をおこなったロバストな関心領域設定手法を用いて,多くの症例を用いたびまん性肺疾患のパッチデータを収集する予定である.しかしながら,本手法は機械学習の手法を用いるために計算時間がかかるため,A01-2清水班の肺領域抽出アルゴリズムの利用も想定している.また,他施設でこのような診断支援を展開するためにはロバスト性が必要で有り,現在研究を進めているCNNを用いた手法をさらに高精度化する予定である.肺癌の診断支援に関しては,診断支援のPDCAサイクルを完成させるために肺結節鑑別診断の研究を進めていく予定である.また,これらのアルゴリズムの臨床評価についても研究を進めていく予定である. Ai画像に関しては,現在ミニブタを用いたテクスチャ解析による死後経過時間推定の検討を行っているが,これを人体のAi画像へと適応することを試みる.人体のAi画像においてはその人体臓器の抽出が困難であるためA01-2清水班の臓器抽出アルゴリズムやA01-KB003花岡班のランドマークを用いることを予定している.現在は福井大学のデータを主に用いているが,さらに,東海大学などの多くの施設と協力してデータの収集や解析を予定している.3Dスキャナによる臓器表面データの取得に関しては,さらに多くの肝臓臓器データの取得を予定している.また他の臓器や剖検肺などを対象としたデータ取得も予定している.さらにこれらのデータを用いてA01-3佐藤班と共同研究によるモデル作成を行うことを予定している.
|