計画研究
(1) 糸魚川ー静岡構造線、鬼首地域、新潟や山陰の歪み集中帯でGNSSによる稠密測地観測を継続しデータを蓄積した。また、東北地方太平洋沖地震の前後の地殻ひずみ速度分布の比較から、日本海東縁の歪み集中帯に沿って常に局所的な短縮が生じていることを見出した。この歪み速度の大きさは地質学的な短縮速度と整合的で、現世の地殻変動から非弾性的な歪みの抽出に成功したと言える。(2) 新潟および秋田の活褶曲地域において歪み速度の定量的な検討を行った。地形発達の度合いの空間分布から、短縮変形場の海側から陸側への水平移動を見出した。短縮変形場の移動が認められる地域では、長期的と短期的なひずみ(速度)の不一致が発生する可能性を数値計算で示した。(3) 昨年度採取した新潟~山形~福島(南測線)の試料について,ジルコン(U-Th)/He年代(ZHe年代)を測定したところ、50~10Maの多様な値を示し,約10Ma以前の熱史の複雑さが示唆された.また,青森~秋田~岩手(北測線)で試料採取を行ってAHe年代測定を実施し,南測線と同様な傾向を確認した.一方,背弧側のAHe年代は,南測線と北測線で異なり,南北での隆起時期の違いを反映している可能性がある.(4)歪集中帯北東部での地殻内で発生した地震について、5つの周波数帯についてコーダQの空間分布を推定した。中周波数帯のコーダQと差歪速度には負の相関が見られ、低周波数帯の コーダQ は下部地殻のS波速度構造と、中周波数帯では上部地殻のS波速度構造と相関が見られた。この結果は歪み集中帯内の変形様式の違いに対応すると考えられる。(5) 海洋プレートの沈み込みに伴う島弧地殻の大地形の形成過程について理論的な考察を行った。(6) 2016年1月に研究集会「日本列島の地殻歪みとその諸問題」を開催し、島弧地殻変形の諸問題について集中的な議論を行った。
1: 当初の計画以上に進展している
本研究の成果および研究集会での議論を通して、測地学的な歪み速度が地質学的な歪み速度より1桁大きいという問題について、一定の解決を見るとともに、測地観測データから、地質学的な観測データと整合的な定常変形成分の抽出に成功した。これにより、日本列島の変形場の最大の問題は解決し、今後はより精密な議論の段階に進むことになる。
各研究分担者がそれぞれのデータ取得、分析を進めるとともに、それらの結果を総合し、異なる時空間スケールにおける日本列島の変形場の統一的な理解を得るため、研究分担者および連携研究者間の議論をより密に行う予定である。
すべて 2016 2015 その他
すべて 雑誌論文 (11件) (うち国際共著 9件、 査読あり 11件、 謝辞記載あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件) 学会・シンポジウム開催 (1件)
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