計画研究
宮城県北部地域の既存の広帯域データをコンパイルし、3次元構造解析を行い、1962,2003年の震源が低比抵抗異常域の縁に存在することを明らかにした。紀伊半島南部において広帯域データをグリッド状に20点で取得した。秋田県北部の日本海側10点で長周期MTデータを取得し、周波数応答関数を計算した。含水花崗岩の弾性波速度、電気伝導度の測定を行うとともに、X線CTおよびBIB-SEMによる空隙微細構造観察を行うとともに、物性を支配する空隙構造を明らかにし、クラック開閉による物性変化をモデル化した。また、岩石物性を多様な岩質で調べるべく、天然鉱物を粉砕したナノ粉末を用いて焼結極細粒多結晶体(人工岩石)の作成を行った。地殻流体インバージョンに組み込むべく、ケイ酸塩メルトの密度と体積弾性率を、高温高圧実験と熱力学定式化に基づき、(地殻~上部マントルに相当する)温度、圧力、およびメルト組成・含水量の関数として求めることに成功した。流体計測関係では、野外質量分析装置の西南日本における計測サイト候補の3地点の井戸について、揚水試験、温度・電気伝導度検層、採水およびガス採取を行い、和歌山県田辺市に本宮観測点の深さ1000mの観測井戸では帯水層の透水係数は十分に大きく、採取したガスの3He/4He比は周辺の温泉と同様に高いことがわかった。一方で、質量分析の障害となる硫化物などは少なく、同装置を設置する有力な候補であることが判明した。東北地方の深部流体フラックス分布の推定においては、Br-Cl-Iの関係を用いてスラブ起源水・海水・続成水の混合関係を明らかにする手法を開発し、東北日本の地下水(塩水成分)の起源を説明することが出来た。長野県北部地震直後の流体の湧出について、活断層破砕帯の地震時の浸透率が、地震間の破砕帯物質の浸透率に比べて4~5桁ほど大きくなると推定された。
2: おおむね順調に進展している
地震-火山活動、地殻変動など、地殻ダイナミクスの理解に重要と考えられる「地殻流体の分布や流量」を明らかにすることが、本計画研究の目的であり、新学術領域「地殻流体」で得られた知見を発展させ、地磁気地電流(MT)観測・岩石物性測定・地殻流体インバージョン・深部由来流体計測により、流体分布や流量の定量的制約を目指している。本年度は、紀伊半島や東北地方におけるMT観測と比抵抗構造の推定、岩石試料の弾性波速度の測定と空隙・クラックによる物性変化のモデル化や人工試料作成、地殻流体インバージョンのためのケイ酸塩メルトの密度と体積弾性率の(地殻~上部マントルに相当する)温度、圧力、およびメルト組成・含水量の関数としての定式化、野外質量分析装置の計測候補地点での各種調査、東北日本の地下水(塩水成分)の起源の解明、長野県北部地震直後の流体フラックスの推定など、成果が上がっている。
天然の岩石および人工の多結晶焼結体を試料として、無水・含水状態で弾性波速度測定及び電気伝導度測定を行い、弾性波速度と電気伝導度の対応関係を明らかにする。東北地方および紀伊半島における前弧側の地殻比抵抗構造及び東北地方マントルウェッジ解明の為の広帯域・長周期MT観測をそれぞれ行う。岩質、流体種(マグマ、水溶液、ガス)と量、流体連結度のインバージョンモデルを上記の成果を考慮して改良し、観測データに応用する。また、地殻流体の物質的実態を捉えるために、深部由来流体の採取・分析を紀伊、四国地方において行う。東北、中部、近畿地方および台湾において流体の採取・分析を行い、既存資料と合わせて地殻流体のフラックス分布を推定する。地殻深部由来の流体を観測点で分析可能な野外質量分析装置を完成させ、ラボ内および観測点での試験運転を行う。
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すべて 雑誌論文 (16件) (うち査読あり 16件、 オープンアクセス 9件、 謝辞記載あり 6件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 3件、 招待講演 7件) 図書 (3件) 備考 (1件)
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