研究領域 | 地殻ダイナミクス ー東北沖地震後の内陸変動の統一的理解ー |
研究課題/領域番号 |
26109006
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
飯尾 能久 京都大学, 防災研究所, 教授 (50159547)
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研究分担者 |
小川 康雄 東京工業大学, 理学院, 教授 (10334525)
渡邊 了 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 教授 (30262497)
田中 秀実 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 講師 (40236625)
風早 康平 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 活断層・火山研究部門, 研究員 (50356763)
角森 史昭 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (60291928)
梅田 浩司 弘前大学, 大学院理工学研究科, 教授 (60421616)
石川 正弘 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 教授 (70232270)
岩森 光 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球内部物質循環研究分野, 分野長 (80221795)
松本 則夫 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 活断層・火山研究部門, 研究員 (80358051)
市來 雅啓 東北大学, 大学院理学研究科, 助教 (80359182)
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研究期間 (年度) |
2014-07-10 – 2019-03-31
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キーワード | 地震波速度 / 電気伝導度 / クラック / 含水量 / 有馬型塩水 |
研究実績の概要 |
宮城県北部及び紀伊半島南部で3次元比抵抗解析を進め、宮城県北部の3次元解析の結果、1962年の震源域の深度10kmの低比抵抗のさらなる深部延長が北西方に存在するのに対して、1900年、2003年の震源域の低比抵抗異常は、深部への延長が無いことがわかった。東北地方や紀伊半島においてMTデータの取得が進んだ。含水花崗岩の弾性波速度・電気伝導度測定、X線CTおよびBIB-SEMによる空隙構造観察、粒界クラックのパーコレーションに関する数値実験を行い、クラック密度の変化に伴う電気伝導度の変化を粒界クラックの連結の問題として統一的に理解することができた。また、天然鉱物を粉砕したナノ粉末を用いて焼結極細粒多結晶体(人工岩石)の作成を行い、無水での弾性波速度測定、無水・含水状態での電気伝導度測定を行った。最新の物性を考慮し、さまざまな温度・圧力条件での、無水・含水岩石の地震波速度・電気伝導度を再現する数値モデルを改良した。熊本地震震源域周辺の温泉水・地下水の調査を複数回行ない、地震発生前に行った調査結果と比較し、多くの温泉水・地下水の水位や湧水量が変化したがそのパターンは地震後の体積歪変化や震度分布では説明が難しく複雑であることがわかった。兵庫県南部地震の震源断層である野島断層を貫いた平林観測井戸において地下水位連続観測から透水係数の時間変化を解析し、1996~2006年は一定で、その後小さくなり、2011年東北地方太平沖地震と2013年淡路島の地震直後に一時的に上昇したことが分かった。また、揚水試験による透水係数は、水位観測から推定した透水係数とほぼ一致し、温度検層結果より、主な帯水層は断層を貫いた深度630~650mではなく、深さ200m以浅であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
地震-火山活動、地殻変動など、地殻ダイナミクスの理解に重要と考えられる「地殻流体の分布や流量」を明らかにすることが、本計画研究の目的であり、新学術領域「地殻流体」で得られた知見を発展させ、地磁気地電流(MT)観測・岩石物性測定・地殻流体インバージョン・深部由来流体計測により、流体分布や流量の定量的制約を目指している。本年度は、宮城県北部及び紀伊半島南部で3次元比抵抗解析、含水花崗岩や焼結極細粒多結晶体の弾性波速度・電気伝導度測定、無水・含水岩石の地震波速度・電気伝導度を再現する数値モデルを改良、熊本地震震源域周辺の温泉水・地下水の調査と分析、野島断層における揚水試験や地下水位連続観測からの透水係数の透水係数の推定など成果が上がっている。
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今後の研究の推進方策 |
天然の岩石および人工の多結晶焼結体を試料として、無水・含水状態で弾性波速度測定及び電気伝導度測定を行い、弾性波速度と電気伝導度の対応関係を明らかにする。東北地方および紀伊半島における前弧側の地殻比抵抗構造及び東北地方マントルウェッジ解明の為の広帯域・長周期MT観測をそれぞれ行う。岩質、流体種(マグマ、水溶液、ガス)と量、流体連結度から地震波速度、電気伝導度を導くフォワードモデルを高精度化し、観測データとの比較方法やインバージョンのアルゴリズムを改良する。また、地殻流体の物質的実態を捉えるために、中央構造線沿いとその周辺地域に重点をおきつつ、日本列島全域における火山岩・深部由来流体、採取・分析・解析を行う。東北、中部、近畿地方および熊本地震震源域周辺において流体の採取・分析を行い、既存資料と合わせて地殻流体のフラックス分布を推定する。地殻深部由来の流体を連続的に分析可能な野外質量分析装置を観測点に設置し、時系列観測データの取得を開始する。
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