計画研究
本研究課題では、(1)2011年東北地方太平洋沖地震(東北沖地震と略記)による変形過程のモデル化、(2)特定の領域の高精度変形モデル構築、さらに、(3)断層レオロジーを考慮したすべり過程のモデル構築を行う。平成26年度はそれぞれについて以下の研究を実施した。(1)東北沖地震に対して、単純な粘弾性構造を仮定した場合の余効すべり分布を推定し、繰り返し地震の積算から求めた余効すべり分布との比較を行った。レオロジーモデルとしてバーガースモデルを考慮した計算に対応できるよう、並列計算用の有限要素法ソフトウェアの機能の拡張を行った。高密度の地温勾配の分布を基に、島弧内陸のレオロジー構造モデルを構築し、中規模有限要素法モデルによる東北沖地震後の内陸変動のモデル化を行った。(2)東北沖地震後の余効変動場を把握するためのGNSSデータの収集と整理を行い、試験的に背弧地域での時系列解析を行った。2008年岩手・宮城内陸地震の有限要素モデルを構築するための断層形状の計算など、準備を行った。 東北地方内陸部の粘弾性構造を単純化した2次元モデルの計算結果と観測データの比較により、東北沖地震時に2つのひずみ集中帯の振る舞いが異なっていた原因を明らかにした。 新潟神戸ひずみ集中帯におけるGNSSデータから東北沖地震時・地震後変動分布の詳細を明らかにし、有限要素法による地殻の不均質を考慮した地震時変動の弾性応答モデルと観測データの比較検討を行った。(3)「脆性延性遷移を考慮した既存の断層構成則を用いた断層力学モデルを検討」に関する国際誌論文を発表した。2編の国際誌論文(主著1、共著1)発表を行った。過去に生じた内陸大地震の余震活動データを解析することにより断層レオロジーを明らかにするために、既往研究で得られた能登半島地震の余震カタログデータの予備解析を行い、使用可能であることを確認した。
2: おおむね順調に進展している
東北沖地震の余効変動モデルに関しては、予定通り、日本列島域の試験的レオロジー構造モデルを構築し、粘弾性緩和過程の数値シミュレーションを行った。また、単純な粘弾性構造を仮定した場合の余効すべり分布を推定した。さらに、数値計算用の計算機及び有限要素法のソフトを購入し準備を進めた。また、東日本や山陰地方のGNSS地殻変動データの整理や次年度から本格的に開始する予定である有限要素法を用いた地震時・地震後変動の数値シミュレーションに向けた環境整備を予定通り行った。また、東北地方脊梁山地周辺のひずみ集中帯のモデル化も予定通り進めた。脆性延性遷移を考慮した断層力学モデルに関しても国際誌論文を発表したので、遅滞無く研究が遂行されていると判断できる。さらに、余震データの予備解析を行うところまでできたので、順調に進展していると評価できる。
今後は予定通り、東北沖地震による島弧・海溝系における広域変形過程のモデル化、特定の領域の高精度変形過程のモデル構築、断層レオロジーを考慮したすべり過程のモデル構築を進めるが、沈み込みプレート境界の応力レベルや固着・すべりは内陸変動のモデル化において重要な境界条件となる。そこで、内陸活断層のモデル化だけではなく、沈み込みプレート境界における超巨大地震の発生サイクルモデルも重要な課題として研究を進める。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (13件)
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