計画研究
(目標1)X染色体に選択的にcFLIPs遺伝子を導入したノックイン(KI)マウスを樹立し以下の事を明らかにした。1)♂cFLIPs KIマウスは胎生18.5日には腸管上皮細胞の著明なアポトーシスが亢進し、胎生致死となった。2)組織学的な解析ではcFLIPs KIマウスの腸管上皮細胞の多くは活性化型カスパーゼ3抗体陽性であった。電子顕微鏡の観察では、典型的なアポトーシス像を呈している腸上皮細胞は少なかったものの、死んだ細胞を貪食した上皮細胞が多数認められた。このことは胎生期の腸管上皮細胞はアポトーシスに陥った細胞を速やかに貪食してしまうことを示している。また一部の上皮細胞は細胞質に大きな空胞が認められ、ネクローシスに陥っていると考えられた。3)cFLIPs KIマウスとRIPK3欠損マウスを交配することにより、部分的に♂の胎生致死の表現型がレスキューされ、腸管上皮細胞のアポトーシスが抑制される。4)腸管を用いてcFLIPsのin situ hybridizationを行ったところ♀KIマウスではモザイク状に、♂KIマウスでは全体的にcFLIPsのmRNAレベルでの発現が認められた。5)野生型マウスとcFLIPs KIマウスの腸管での遺伝子発現をゲノムワイドに解析した結果、組織修復に関与するRegIIIb, RegIIIgの2種類の遺伝子の発現がcFLIPs KIマウスで亢進していることを見出した。(目標2) 変異SPINK1ノックインマウスの解析から以下の事を明らかにした。SPINK1ノックインマウスは正常に出生し、生後4週でヒト慢性膵炎と類似の病態が完成することが判明した。慢性膵炎を発症する過程で、① オートファジー不全、② p62の蓄積、③ 膵内トリプシン活性の亢進、④細胞死(アポトーシス、ネクローシス)を確認した。プログラムされたネクローシスの実行因子RIP3の欠損マウスとの二重変異マウスを解析した結果、その重症度が抑制され、このネクローシスが膵炎発症に重要であることが判明した。
2: おおむね順調に進展している
(目標1)1) cFLIPs KIマウスで見られる腸管における細胞死がRIPK3依存性かどうかを検討し、RIPK3を欠損させたことでアポトーシスが減少するという事を見出した。この事は予想外な結果であり、今後RIPK3の機能や、RIPK3を阻害する治療剤を開発あるいはモデル動物に投与する上で非常に重要な知見と考えられる。2) マイクロアレイ解析を行いcFLIPs KIマウス腸管で発現が上昇し、組織修復に関与する遺伝子としてRegIIIbとRegIIIgを同定できたことから、当初の目的は達成できていると考えられる。(目標2)3) 予定していた膵特異的Atg 5欠損マウス、カテプシンB欠損マウス、RIPK3欠損マウスと変異SPINKノックインマウスとの二重変異マウスの樹立および解析が終了し、論文を投稿を予定である。4) ネクローシス制御化合物の探索(単離腺房細胞を用いたex vivo解析)は、現在膵腺房細胞の培養系を構築した。
(目標1)1) 腸管におけるcFLIPsのin situ hybridization (ISH)を行うことができたが、他の組織においてcFLIPsがどのような発現パターンを示しているかを検討する予定である。2) 細胞死が亢進している腸管上皮細胞を用いてオーガノイドカルチャーを行うのは、現実的ではないことが判明した。そこで、細胞死に伴うRegIIIbやRegIIIgの発現のメカニズムを明らかにするために、胎児腸管を用いて短期間の培養を行い、様々な阻害剤を投与することでこれらの遺伝子の発現が低下するかを明らかにする予定である。3) RegIIIbとRegIIIgの胎生期における役割を明らかにするためにCrisper/Cas9法を用いて両者の二重欠損マウスを樹立する。4)cFLIPsを発現させることで何故RIPK3依存性にアポトーシスが誘導されるかのメカニズムをcFLIPsの会合分子の同定や、cFLIPs KIマウスの腸管においてRipoptosome形成が促進されているかなどの解析を通じて明らかにする。(目標2)5) SPINK不全に伴って生じる死細胞が発するシグナルの特定を、マイクロアレイの結果からいくつかの候補を絞り解析を行う。6) これまでのin vivo研究に加え、in vitroの培養系を構築し、膵腺房細胞の細胞死制御化合物の探索を行う。
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