研究領域 | 細胞死を起点とする生体制御ネットワークの解明 |
研究課題/領域番号 |
26110003
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
中野 裕康 東邦大学, 医学部, 教授 (70276476)
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研究分担者 |
大村谷 昌樹 熊本大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (60398229)
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研究期間 (年度) |
2014-07-10 – 2019-03-31
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キーワード | 計画的ネクローシス / アポトーシス / ネクロプトーシス / Reg3 / CFLIPs / ノックインマウス / SPINK / 慢性膵炎 |
研究実績の概要 |
(目標1)X染色体に選択的にCFLIPs遺伝子を導入したノックインマウスを樹立して以下の事を明らかにした。 1)CFLIPs KIマウスの腸管において発現上昇している遺伝子として同定したReg3bとReg3gのそれぞれ単独の欠損マウスを大村谷らとの共同研究によりCrispr/Cas9法を用いて樹立した。これらのいずれの系統のマウスは正常に発育し、腸炎を発症しないことを確認した。2)CFLIPs KIマウスの腸管におけるReg3bとReg3gの発現上昇は、Ripk3欠損マウスと交配し、腸管上皮細胞死が抑制されると消失することから細胞死に伴い発現が上昇していることを明らかにした。3)Reg3b産生細胞とアポトーシス細胞との関連を明らかにするために、活性化型カスパーゼ3抗体とReg3bに対する抗体で二重染色を行ったところ、それぞれの抗体陽性細胞はmergeしないことが明らかとなった。4)CFLIPs過剰発現マウスの細胞死への、RIPK3以外の分子の関与を明らかにするために、Caspase 8-/-;Ripk3-/-マウス、Mlkl-/-マウス、Ripk1キナーゼ不活性型マウスとCFLIPs KIマウスとの交配を開始した。 (目標2) 遺伝性膵炎の原因遺伝子SPINK1のノックインマウスを樹立し以下のことを明らかにした。 慢性膵炎を発症する過程で、5) オートファジー不全、p62の蓄積、膵内トリプシン活性の亢進、および細胞死(アポトーシス、ネクローシス)が亢進することを見出した。6) マイクロアレイの結果から死細胞が発するシグナルを複数選択し、その中からさらに候補を絞り込み、さらにこれらの遺伝子の欠損がin vivoで慢性膵炎発症にどのような影響を及ぼすのか明らかにするため、CRISPR/Casシステムを用いて、ノックアウトマウスを作製した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね順調に進んでいる。 1)予定していたReg3bおよびReg3g単独欠損マウスの樹立に成功しており、さらにCFLIPs KIマウスとの交配も順調に進んでおり、今年度中には結論が出ると考えられる。 2)ネクロプトーシスやアポトーシス関連遺伝子との交配も現在順調に進行している。 3) 慢性膵炎時に見られる死細胞から放出される因子をマイクロアレイで複数同定し、すでにこれらの遺伝子改変マウスの樹立に成功している。
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今後の研究の推進方策 |
(今後の研究の推進方策) (目標1) 今年度の研究からReg3bを発現している細胞と活性化型カスパーゼ3陽性のアポトーシス細胞は同一ではないことが明らかとなった。このことは、アポトーシス細胞が放出したなんらかの因子に応答して、死細胞の近傍に存在する生きている上皮細胞がReg3bを産生している可能性を示している。そこで、これまでReg3bの発現誘導に関与することが報告されているサイトカイン(IL-11, IL-22, IL-6, IL-17aなど)の発現上昇の有無、およびそれらの遺伝子欠損マウスの腸管を用いてReg3bの遺伝子発現を検討する。 (目標2) 本年度新たに樹立したノックアウトマウスと慢性膵炎モデルマウスを交配して、慢性膵炎の進展(炎症、線維化、等)にどのような影響を及ぼすのか、解析を行う。また、これまでのin vivo研究に加え、in vitroの培養系を構築し、膵腺房細胞の細胞死制御化合物の探索を行う。
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