計画研究
従来、生体における細胞死の多くはアポトーシスであると考えられて来た。しかし、最近になってアポトーシス以外の多様な細胞死の存在が判明した。中でもネクローシスは外界からの傷害により誘導される偶発的で制御されない細胞死として考えられてきたが、その誘導機構が見いだされるようになり、生体内で重要な細胞死の一つとして認識されるようになった。しなしながら、同じネクローシス様の形態変化でも細胞死誘導機構の違いが見られ、その詳細なメカニズムや生理的・病理的な役割にはいまだ不明な点が残されている。このような背景で申請者は酸化ストレスにより誘導されるネクローシスを選択的に抑制ないしは誘導する化合物の開発に成功していることから、そのプローブ化を経てメカニズム解明へと迫ることを目指す。本年度は昨年度の検討で得られた蛍光プローブを用いてその細胞内局在を調べ、特定のオルガネラに局在することを明らかにした。また、昨年度得られたタンパク質標識化プローブに関してはその活性を調べたところ、活性の低下が見られることが明らかとなった。そこでこの活性低下を補うべく、元の親化合物の母核を変化する大胆な構造展開を行った。一部化合物の安定性の低下なども見られたが、物性改善を狙った構造展開も同時に行い、安定かつ活性を向上させた誘導体の開発に成功した。得られた構造活性相関をもとにして、より高活性なタンパク質標識化プローブの設計・合成へと展開する。
2: おおむね順調に進展している
本年度は昨年度までに開発したプローブの解析を中心に研究を展開した。蛍光プローブに関しては、その細胞内局在を明らかにすることに成功したが、一方でタンパク質標識化プローブに関しては活性の低下が見られた。この問題を解決すべく、化合物の構造展開を粘り強く続け、活性を向上させた新規誘導体の開発に成功した。プローブの構造展開を再び行ったことは想定していなかったことではあるが、次年度以降のターゲット分子同定の際に鍵となる化合物を得る事ができたと考えられ、研究は順調に進展していると考えられる。
今後は蛍光プローブで同定されたターゲットとなるオルガネラを中心に解析を進め、さらにターゲット分子同定のためのタンパク質標識化プローブの開発も行う。タンパク質標識化プローブを得ることに成功した後は、ターゲットオルガネラを中心にして標識化実験を行い、目的とするターゲット分子の同定を目指す。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 3件、 招待講演 6件)
Chem. Eur. J.
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