研究領域 | 細胞死を起点とする生体制御ネットワークの解明 |
研究課題/領域番号 |
26110004
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
袖岡 幹子 国立研究開発法人理化学研究所, 袖岡有機合成化学研究室, 主任研究員 (60192142)
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研究分担者 |
どど 孝介 国立研究開発法人理化学研究所, 袖岡有機合成化学研究室, 専任研究員 (20415243)
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研究期間 (年度) |
2014-07-10 – 2019-03-31
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キーワード | 細胞死 / ネクローシス / 構造活性相関 / 有機化学 / 酸化ストレス |
研究実績の概要 |
従来、生体における細胞死の多くはアポトーシスであると考えられて来た。しかし、最近になってアポトーシス以外の多様な細胞死の存在が判明した。中でもネクローシスは外界からの傷害により誘導される偶発的で制御されない細胞死として考えられてきたが、その誘導機構が見いだされるようになり、生体内で重要な細胞死の一つとして認識されるようになった。しなしながら、同じネクローシス様の形態変化でも細胞死誘導機構の違いが見られ、その詳細なメカニズムや生理的・病理的な役割にはいまだ不明な点が残されている。申請者はこれまでに酸化ストレスにより誘導されるネクローシスを選択的に抑制するIM化合物の開発に成功している。本研究ではネクローシスのメカニズム解明を目指し、I M化合物をはじめとする様々な細胞死制御化合物の作用機序解析を行う。 今年度は動物実験での応用を目指してIM化合物の構造展開を進め、新たな誘導体IM-17の開発に成功した。本化合物はラット心筋細胞において酸化ストレスで誘導されるネクローシスを抑制する一方で、肝ミクロゾーム中でも比較的安定に存在することがわかった。そこで酸化ストレスによるネクローシスが観察される疾患として、虚血再灌流障害に着目してIM-17の保護効果を検討した。その結果、ラット摘出心臓モデルにおいて虚血再灌流障害による心機能の低下、心組織の傷害を抑制することがわかった。さらに、虚血再灌流障害で不整脈が誘発されるラットモデルにおいても、不整脈の頻度と時間、さらにラットの突然死を顕著に抑えることが明らかとなった。加えて、新学術領域内の共同研究で開発した細胞死制御化合物に関しても、標的タンパク質同定に向けたプローブ開発に成功した。今後は開発したプローブを用いて標的タンパク質の同定を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は当初計画していたターゲット同定だけではなく、並行して動物実験への応用に関しても検討し、動物レベルでも活性を示す化合物を得ることに成功した。これにより、今後動物レベルでもターゲット同定を進めることができる可能性が広がり、今後の研究に大きな進展をもたらしたと言える。さらに、開発した細胞死制御化合物に関して活性を維持したままプローブ化することに成功している。したがって、最終年度にこれら化合物の標的タンパク質を同定する基盤を確立することに成功しており、研究は順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は動物レベルでも活性を示すプローブも活用し、引き続き化合物の結合部位同定を中心にして研究を展開する。結合部位が同定された場合には、その結合部位から化合物がどのように作用しているかを推定し、その作用機序解明へとつなげる。また、今年度開発したプローブに関しても、順次結合タンパク質の同定、結合部位の同定へと研究を展開する。
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