計画研究
研究実績の概要:H26年度は主に以下の成果が得られた。1)パイロトーシス動態の解明:カスパーゼ1活性化を検出する新規プローブSCAT1を用いたライブイメージングにより、炎症応答時のカスパーゼ1活性化はある程度の閾値以上の刺激では刺激の種類によらずデジタル様式で生じること、およびカスパーゼ1活性化を生じた細胞はすみやかな細胞膜の破裂をきたし死に至ることを明らかにした(Liu et al., Cell Reports, 2014)。このようなデジタルなカスパーゼ活性化および細胞死の制御はアポトーシス時にみられるカスパーゼ3の活性化と類似している。カスパーゼ3はApoptosome、カスパーゼ1はinflammasomeという全く異なる巨大蛋白質複合体に制御されているにも関わらず、その活性化動態や細胞死への関与の仕方は類似している点が非常に興味深いといえる。2)死細胞が周辺細胞動態に与える影響の検出:以上の解析をさらに発展させ、カスパーゼ1活性化に引き続いて放出されるIL-1bが、パイロトーシスして死ぬ細胞からのみ放出されることを明らかにした。この解析では、共同研究者の開発した全反射顕微鏡を用いたIL-1b分子可視化システムとSCAT1との同時イメージングが非常に威力を発揮した(Liu et al., Cell Reports, 2014)。この結果は、IL-1b放出の源がカスパーゼ1を活性化して死ぬ細胞であることを直接的に示した点で大変意義深いものである。
2: おおむね順調に進展している
当初予定していたカスパーゼ1活性化動態可視化をSCAT1により捉えることに成功した。またそれにより、カスパーゼ1を活性化し炎症性細胞死(パイロトーシス)した細胞からの因子が、近接細胞に大きな影響を与えうることが、実感として感じられるように示された。このように、多様な細胞死の可視化系の構築と死細胞が周辺細胞動態に与える影響の解析はおおむね順調に進展しているといえる。
本年度は以下の点に注目し研究をさらに推進する。1)炎症応答時にマクロファージが周辺組織にどのような影響を与えうるのか、単一細胞イメージング技術を用いて引き続き検証する、2)アポトーシス細胞が周辺組織に与える影響をマウス胚神経管閉鎖過程において組織学的および細胞生物学的に検証する。さらにこの解析の解像度を上げるため、時期部位特異的にアポトーシス検出プローブSCAT3を発現できるトランスジェニックマウスを作成する。3)アポトーシス阻害時等に見られる非アポトーシス性新規細胞死の実行分子の解析を行なって行く。また、非アポトーシス性細胞死を検出する手法の開発を試みる。
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)
Developmental Cell
巻: 32 ページ: 478-490
10.1016/j.devcel.2015.01.019.
Cell Reports
巻: 8 ページ: 974-982
10.1016/j.celrep.2014.07.012.
Methods Enzymol.
巻: 544 ページ: 299-325
10.1016/B978-0-12-417158-9.00012-1.
http://www.u-tokyo.ac.jp/public/public01_260808_j.html