研究実績の概要 |
ヒト疾患の発症に決定的に寄与する分子機構を解明するために、遺伝性疾患の原因遺伝子を同定するアプローチはきわめて信頼性の高い方法論の一つである。本研究では細胞死がその病態に関わる家族性疾患をモデルとして、その遺伝子変異がどのような分子基盤で細胞死誘導に依存した生体応答を惹起しているかについて解明することを目的とした。血球貪食症候群の原因遺伝子であるFHL6のヒト変異と同様の部位に変異を持つFHL6ノックインマウスを樹立した。FHL6の変異によって細胞死が亢進することは明らかになっている。現在、免疫学的変化および細胞死に関わる分子・細胞貪食に関わる分子群の発現と機能を検討している。従来の研究で、家族性寒冷蕁麻疹の新しい原因遺伝子としてNLRC4を同定した。NLRC4の変異の結果、細胞死の亢進とIL-1bの産生亢進が観察されている。一方、海外の研究グループはNLRC4異常によって発症する腸炎を主体とする自己炎症性疾患を報告した。我々は、腸炎を主体とする自己炎症病態についてNLRC4の変異の有無を検討したが,NLRC4のエクソン領域およびエクソンーイントロン境界領域には変異を見いだすことができなかったことから、この症候群ではNLRC4以外の変異が関与することが考えられた。罹患者のゲノムサンプルを用いたゲノム解析を開始した段階である。現在、エクソーム解析を実施中であり、その詳細な解析を平成27年度には実施する予定である。また、変異が確認された場合には、その遺伝子の機能解析も併せて行うことを計画している。
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