研究領域 | 細胞死を起点とする生体制御ネットワークの解明 |
研究課題/領域番号 |
26110009
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
山崎 晶 九州大学, 生体防御医学研究所, 教授 (40312946)
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研究分担者 |
宮本 智文 九州大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (40182050)
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研究期間 (年度) |
2014-07-10 – 2019-03-31
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キーワード | 糖脂質 / 自然免疫 |
研究実績の概要 |
様々な臓器ホモジネート由来の脂溶性成分を抽出・濃縮した後、シリカゲルカラムで分離し、ヒトMincleレポーター細胞を用いて活性画分を探索したところ、肝臓由来の抽出液から強い活性を示すピークを得た。このピークをさらに薄層クロマトグラフィーで展開し、移動度ごとに分割して各フラクションの活性を評価した結果、活性を有する単一スポットが検出された。このスポットをHPLC、質量分析で解析したところ、セラミド骨格を有する糖脂質を同定した。 内因性糖脂質がMincleに認識され、自然免疫応答を活性化し得ることが判明した。内因性糖脂質の蓄積は慢性炎症や様々な疾患との関連が示唆されており、本知見は、これらの疾患の治療戦略にも新しい概念を与えるものと期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
内因性糖脂質がヒトMincleに認識され、自然免疫応答を活性化し得ることが判明した。内因性脂質の蓄積は慢性炎症や様々な疾患との関連が示唆されており、本知見は、これらの疾患の治療戦略にも新しい概念を与えるものと期待される。
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今後の研究の推進方策 |
1. 細胞死に伴う内因性リガンドの量的・質的変化の追跡 【様々な肝細胞死過程における上記内因性リガンドの共同の追跡】領域内研究者が樹立した様々なin vivoモデルより肝臓を摘出し、細胞死・再生・ストレス下におけるリガンドの量的変化、修飾の有無を上記で確立したNMR、質量分析、HPLCの条件を用いて定量、定性的に測定する。様々な細胞死過程や、肝臓損傷モデルにおける当該リガンドの挙動を「肝細胞死共同プロジェクト」の一環として定量的、定性的に解析する。また複数の内因性糖脂質を同時に定量できるシステム(グライコリピドーム)の確立を目指す。さらに疾患に直結する他の損傷臓器における内因性リガンドの挙動を解析する。 【その他の損傷臓器における内因性リガンドの同定と挙動の解析】申請者らは、膵臓において新たなC型レクチンのリガンド活性画分を見出しつつある。この画分に関しても同様に活性を指標に単離精製を推進し、構造決定を目指す。同定できた場合は、細胞死に伴う慢性膵炎モデルを用いて、経時的に膵臓を摘出し、当該リガンドの定量的/定性的解析を実施する。 2. 内因性リガンド認識の破綻に伴う疾患の作用機序解明 現在見出しつつある新規Mincleリガンド候補としての内因性糖脂質がもたらす肝脾腫や中枢神経病変を伴う致死性疾患の機序を解明する。本疾患を発症する当該糖脂質分解酵素の欠損マウスと、各Mincleファミリー欠損マウス、Tgマウスを交配し、炎症、病変の程度、死亡率の変化など疾患に与える影響を解析する。寄与が認められた場合はブロッキング抗体の治療効果を検討する。また、リガンド特異性に種差を見出していることから、ヒトのリガンド特性を反映した病態モデルの創成を目的として、ヒト Mincleノックインマウスを樹立する。
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