計画研究
Mincle(Macrophage-inducible C-type lectin)は、死細胞を認識する受容体であるが、内因性リガンドの詳細は不明であった。本研究では、死細胞上清中より様々な画分を調製してリガンド活性を検討した結果、Mincle発現レポーター細胞の活性化を促す分画を同定した。この分画を精製し、質量分析、および核磁気共鳴法により構造解析を行ったところ、β-glucosylceramide(β-GlcCer)が同定された。実際、樹状細胞をβ-GlcCerで刺激したところ、炎症性サイトカイン産生が誘導されたが、Mincle欠損樹状細胞では産生されないことも判明した。β-GlcCerは、セラミド代謝産物の一種であり、小胞体やゴルジ体に局在すると考えられている。その合成と分解は厳密に制御されており、分解酵素であるGBA1(β-glucosylceramidase)の機能欠失型変異は、β-GlcCer蓄積を引き起こし、全身性の炎症を伴うゴーシェ病の原因となることが知られている。GBA1欠損樹状細胞に抗原をパルスして免疫すると、野生型に比べ獲得免疫誘導能の亢進が観察されたが、この効果は、Mincle x GBA1二重欠損樹状細胞で消失した。以上より、通常は細胞内代謝物として働くβ-GlcCerは、細胞死に伴って放出され、Mincleを介して免疫応答を誘導する因子として機能することが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
目標としていた死細胞からのダイイングコードとして、βグルコシルセラミドの同定に成功し、論文として発表した。
Mincle以外にも、複数の活性化型C型レクチン受容体が様々な状況下で自己由来細胞を認識することを見出している。レポーター細胞、Ig融合タンパク質を用いて、リガンド発現細胞集団を特定し、生化学的、分子生物学的手法を用いてリガンド分子の探索を行い、生体が異常自己を認識する分子機構の解明を目指す。
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