計画研究
(1)低酸素へのハダカデバネズミとマウス細胞の応答性の比較:これまで低酸素下での増殖の挙動がハダカデバネズミとマウス細胞で異なるという結果を得ていたが、ラインを増やして詳細な比較を行ったところ、有意な応答性の違いが見られなくなった。そこで方針を変更し、低酸素条件からの通常酸素への暴露(虚血再灌流傷害条件)を行ったところ、ハダカデバネズミ細胞で死細胞が非常に少ないという結果を得た。(2)酸素消費速度の種間比較:ハダカデバネズミの培養条件(32℃ 5% O2)とマウスの培養条件(37℃ 20%O2)のそれぞれにおいて線維芽細胞の酸素消費量を比較したところ、どちらの条件においてもハダカデバネズミのほうが酸素消費量が少ないことが判明した。(3)低酸素応答遺伝子の解析:遺伝子配列から、低酸素下でのハダカデバネズミHIF1αのタンパクの安定性が低いことが示唆されていたが、解析の結果、安定性はマウスと大差ないことが判明した。一方申請者らのこれまでの解析から、通常マウス・ヒトでは低酸素下で亢進するiPS細胞の樹立効率が、ハダカデバネズミでは逆に、低酸素下で樹立が完全に抑制されることが明らかになった。(4)エネルギー代謝の種間比較:取得した肝臓・心臓におけるメタボロームデータの解析を進め、虚血耐性に関与すると考えられるマウスとの代謝産物の差を見出した。
2: おおむね順調に進展している
ハダカデバネズミは細胞レベルで虚血再灌流傷害への抵抗性をもつことが明らかになった。また、ハダカデバネズミiPS細胞の解析により、低酸素においてもiPS細胞の樹立効率が上昇しないということが判明し、今後の解析により、低酸素応答性の違いによる新たなハダカデバネズミ特異的がん抑制機構の発見に繋がる可能性がある。Flux analyzerや質量分析を用いたエネルギー代謝解析についても順調に進展していることから、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
・虚血再灌流条件での細胞の応答性の種間比較を更に進めた後、RNA-seq, メタボローム解析を行う。・一般的に、低酸素下ではOct3/4を含む未分化マーカーが活性化し、体細胞のがん化および悪性化に寄与することが知られている。ハダカデバネズミでは低酸素への未分化マーカーの応答性が異なることでiPS細胞のみならずハダカデバネズミ個体のがん化耐性が制御される可能性もあるため、今後、未分化マーカー遺伝子に着目しつつ低酸素応答遺伝子の比較解析を更に進める。・ミトコンドリア呼吸鎖の複合体I-Vの機能の種間比較を行う。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
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