計画研究
ハダカデバネズミはマウスと同程度の大きさながら、異例の長寿命(平均28年、最大寿命>30年)であり、がん化耐性を備えた稀有なげっ歯類である。また、地中のトンネルに集団で生活しており、哺乳類の中で最も低酸素耐性を持つ種のひとつとしても知られている。本申請研究では、ハダカデバネズミの著しい低酸素適応性に寄与すると考えられる、ハダカデバネズミ特異的な代謝制御機構に着目し、メカニズム・関与因子の同定を行うことを目的としている。これまでに申請者らは、ハダカデバネズミ線維芽細胞の酸素消費速度が、同条件で培養したマウス線維芽細胞と比べて低いことを示してきた。また、解糖系の指標となる細胞外酸性化速度についてもマウスと比べてハダカデバネズミで低く、一般に低酸素適応としてみられるような解糖系の亢進は生じていないことを明らかにした。さらに、Flux analyzerおよび単離ミトコンドリアを用いた生化学的解析からハダカデバネズミミトコンドリアのいくつかの酵素活性についてマウスとの差異が認められている。現在、ハダカデバネズミ特異的な解糖系・酸化的リン酸化の活性低下のメカニズムについて、代謝フラックス・ミトコンドリア機能などに着目し、詳細な解析を進めている。また、個体の虚血再灌流条件に相当する細胞の低酸素-再酸素化条件において観察される耐性についても、マウス・ハダカデバネズミ線維芽細胞を用いて引き続き解析を行っているところである。
2: おおむね順調に進展している
本年度、ハダカデバネズミの低代謝化のメカニズムについて、代謝物解析、ミトコンドリア機能解析などから研究を進め、一定の成果を得ることができた。また、虚血再灌流障害についても解析を進めており、興味深い結果を得ている。よって、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
引き続き、ハダカデバネズミの低代謝のメカニズムについて、とくにミトコンドリアに着目して詳細な解析を進める。また、低酸素・虚血再灌流障害耐性について栄養飢餓耐性との関連も明らかにする。また、個体レベルでの低酸素適応について組織におけるデバ特異的遺伝子発現との関係性を検討する。
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