計画研究
(1)活性酸素センサー分子PRLの結合標的CNNM/MagExが上皮細胞の基側部に局在する分子機構を明らかにするため、培養系の上皮細胞MDCKを用いて各種変異体の局在解析や関連因子のノックダウン解析などを行った。その結果、CNNM4/MagEx4のC末端部に存在するいくつかのLLモチーフにAP-1複合体が結合して基側部に運んでいることを明らかにした。また、腎臓の遠位尿細管に発現するCNNM2/MagEx2のヘテロ欠損マウスでの血圧異常を確認していたので、血圧制御に重要な因子群の発現解析を行ったが、特に顕著な変化は見られなかった。このマウスの腎臓で網羅的な遺伝子発現解析などを行ったところ、Mg2+輸送に重要なTRPM6などいくつかの興味深い因子の発現が大きく変化していることを見つけた。またこの発現変化は培養細胞系でCNNM/MagExをノックダウンした際にも確認され、しかもそれが活性酸素応答性であることも明らかとなった。(2)主にTNFα大量投与による全身炎症モデルにおけるKLHDC10の生理機能解析を中心に研究を進めた。その結果、KLHDC10欠損マウスにおいてはTNFα大量投与後、炎症性サイトカインの1つIL-6 量の低下が認められた。一方、ネクロプトーシスの程度の指標となる各種組織障害性マーカー(ALT, LDH)や、ネクロプトーシスを起こした細胞から放出される DAMPs マーカーの1つであるミトコンドリアDNAの量等には、KLHDC10欠損マウスにおいては野生型マウスと比較して顕著な差は認められなかった。さらに、in vitro におけるTNFα誘導性ネクロプトーシスモデルにおいても、KLHDC10欠損によってネクロプトーシスに大きな差は認められなかった。以上の結果は、KLHDC10がネクロプトーシス以降の過程に関与している可能性が高いことを示唆するものと考えている。
2: おおむね順調に進展している
本研究では、活性酸素の直接の酸化標的となる活性酸素センサー分子に着目して、細胞の活性酸素応答を分子レベルで明らかにすることを目的としており、センサー分子PRLやKLHDC10-PP5の酸化に始まる分子応答機序や、その下流で起こるMg2+輸送や細胞死などに関する解析を進める。26年度においては、交付申請書等に具体的に記した研究計画をほぼ実施することができた。またさらに、CNNM2/MagEx2とTRPM6の機能的関連や活性酸素との関連、KLHDC10のネクロプトーシス以降のプロセスへの関与の発見など、当初予想していなかったポジティブな研究成果が得られた部分もあった。今後これらの発見をベースに本研究のさらなる発展が期待でき、その基礎となる重要な発見と位置付けられる。これらの理由から、26年度はおおむね順調に進展していると判断した。
順調に進展した26年度の研究成果を受けて、基本的には当初の研究計画に沿った形で今後の研究を進めて行くことを計画している。またそれと共に、特に重要な成果と考えられるTRPM6との機能的関連性やKLHDC10のネクロプトーシス以降のプロセスへの関与については、それを明確にしてゆくための研究計画を追加したり、よりフォーカスを強めた内容になっている。本研究の所期の目的である「細胞の活性酸素応答を分子レベルで明らかにする」に合致しており、これらの研究計画を実施することでさらに大きな発展が期待できる。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
Biochim. Biophys. Acta.
巻: 1850 ページ: 274-280
10.1016/j.bbagen.2014.10.012.
Biochem. Biophys. Res. Commun.
巻: 455 ページ: 184-189
10.1016/j.bbrc.2014.10.138.
J. Clin. Invest.
巻: 124 ページ: 5398-5410
10.1172/JCI76614.
Cell Rep.
巻: 8 ページ: 1171-1183
10.1016/j.celrep.2014.07.021.
J. Biol. Chem.
巻: 289 ページ: 14731-14739
10.1074/jbc.M114.551176.