計画研究
本研究では、システインのイオウ付加体であるシステインパースルフィドをはじめとする活性ポリスルフィドの生理機能に注目し、メタボローム解析手法(ポリサルファメタボローム)を駆使して、動物および植物における活性イオウ・ポリサルファ系のユニークな抗酸化制御システムの全貌を解明することを目的としている。昨年度までの研究において、高感度タンデム質量分析計(LC-MS/MS)による各種ポリスルフィドの検出・同定システムを開発するとともに、システイン-tRNA合成酵素による翻訳に共役した新規ポリスルフィド生成系を見いだした。本年度は、システイン-tRNA合成酵素の細胞内ポリスルフィド生成およびタンパク質ポリサルファ化に与える影響について解析を行った。哺乳類細胞のシステイン-tRNA合成酵素(CARS2)のノックアウト細胞の作製に成功し、LC-MS/MSを用いたポリサルファメタボロームによる解析を行った結果、野生型細胞に比べCARS2ノックアウト細胞では、細胞内システインポリスルフィドレベルが著明に減少し、CARS2が主要な細胞内ポリスルフィド産生系として機能していることが示された。また、親電子物質とポリスルフィドとの化学反応性を利用した親電子プローブ標識ゲルシフトアッセイを用いてこれらの細胞のタンパク質ポリスルフィド化を解析した結果、CARS2ノックアウト細胞では野生型細胞に比べ、各種タンパク質のポリサルファ化が著明に減弱し、CARS2がタンパク質ポリサルファ化に重要な役割を果たしていることが示唆された。また、CARS2ノックアウト細胞と野生型細胞の比較解析から、CARS2によるシステインポリスルフィド産生がミトコンドリア機能に関わることが示唆され、今後このようなポリスルフィドの生理機能の解析を進めていく予定である。
2: おおむね順調に進展している
本年度は当初計画どおりCARS2ノックアウト細胞の作成とその細胞内ポリスルフィド動態の解析、およびタンパク質ポリサルファ化解析系の構築と各種生体試料中のポリサルファ化タンパク質の解析を行い、目的とする研究成果を得ることができた。研究はおおむね順調に進展していると評価できる。
本研究の当初目的に照らして、研究遂行の上での問題はなく順調に研究が進展している。今後は、新しく発見したシステイン-tRNA合成酵素によるポリスルフィド生成系の役割の解明を中心として、当初計画どおり、動物および植物における活性イオウ・ポリサルファ系のユニークな抗酸化制御システムの全貌解明に向けた研究を推進していく。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (29件) (うち国際共著 5件、 査読あり 27件、 謝辞記載あり 22件、 オープンアクセス 8件) 学会発表 (16件) (うち国際学会 6件、 招待講演 16件) 図書 (1件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件)
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