研究領域 | 酸素を基軸とする生命の新たな統合的理解 |
研究課題/領域番号 |
26111009
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
住本 英樹 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30179303)
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研究分担者 |
高木 博史 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 教授 (50275088)
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研究期間 (年度) |
2014-06-27 – 2019-03-31
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キーワード | 活性酸素 / シグナル伝達 / 蛋白質 |
研究実績の概要 |
(1) 刺激応答型ROS生成酵素NADPHオキシダーゼ(Nox)の時空間的制御機構:細胞内コンパートメント毎に空間特異的に活性酸素種を高感度で検出するための方法として、浦野教授(A03班)と共同で、過酸化水素を特異的に高感度で検出可能な5-(4-nitrobenzoyl)carbonylfluoresceinをO6-benzylguanine化した蛍光試薬NBzF-BGを開発した。PDGF受容体の膜貫通領域と融合させたSNAPタグ(SNAP-PDGFR-TM)を発現させた好中球(Nox2を高発現)を用いて、NBzF-BGを細胞膜特異的にラベルし、好中球の食作用時のNox2による過酸化水素生成を共焦点レーザー顕微鏡を用いて検出する系を確立した。この系を用いて、好中球食作用時の過酸化水素生成を可視化することに成功した。 (2) Nox活性化とカップルした哺乳類細胞の機能調節: Nox2活性化には、「Nox2活性化タンパク質p47phoxの構造変化」と「低分子量Gタンパク質RacのGTP結合型への変換」に加えて、「Rac-GTPと結合したp67phoxがNox2と直接相互作用すること」が必要なことを明らかにした。さらに、細胞刺激時に細胞膜等から遊離されるアラキドン酸は、上記3つのステップを全てオンにできることを示した。 (3) 酵母のNO合成制御機構:Tah18とDre2の共過剰発現株を用いたウェスタン解析により、酸化ストレス(高温・過酸化水素処理)に伴いTah18-Dre2複合体の割合が有意に減少することを明らかにした。 (4) 大腸菌のイオウ同化制御機構:チオ硫酸イオンからチオ硫酸転移酵素を介してシステインを合成するイオウ同化経路を見出した。また、亜硫酸イオンを含む低分子硫黄化合物のメタボローム解析システムを構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1) 刺激応答型ROS生成酵素Noxの時空間的制御機構:「研究実績の概要」の項で述べた「細胞膜/食胞膜における過酸化水素の高感度で経時的に検出可能な系」の開発に加えて、Nox1およびNox5の細胞膜への局在についての基本的な性質の検討が進んでいるのも順調と言えよう。 (2) Nox活性化とカップルした哺乳類細胞の機能調節:好中球ケモタキシス時にNox2活性化タンパク質が前方に局在することを示したこと、またモデル系としてのHL60細胞(好中球に分化可能な前骨髄球性白血病由来の細胞)を用いたケモタキシス解析系の確立したこと等々からも、順調に進展していると考えている。 (3) 酵母のNO合成制御機構:我々の仮説を支持する結果が得られた。酸化ストレス下では遊離したTah18依存的に細胞保護に必要なレベルのNOが合成されるが、非ストレス下ではDre2がTah18依存的なNO合成酵素活性を抑制することで、NOが過剰に合成されないよう制御していると考えられる。 (4) 大腸菌のイオウ同化制御機構:亜硫酸イオンの生成機構を検証できた。環境中から細胞内に取込まれたチオ硫酸イオンがチオ硫酸転移酵素により亜硫酸イオンまたは硫化物イオンに変換され、システインが合成されることを見出した。また本同化経路が細胞の増殖や解糖系の亢進に関与することも判明した。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 刺激応答型ROS生成酵素Noxの時空間的制御機構:順調に進展しており、現時点では研究計画の変更等は考えていない。 (2) Nox活性化とカップルした哺乳類細胞の機能調節:順調に進展しており、現時点では研究計画の変更等は考えていない。 (3) 酵母のNO合成制御機構:酸化ストレス(高温・過酸化水素処理)によるTah18 とDre2 の解離の確認と細胞内NO レベルの測定を行う。 (4) 大腸菌のイオウ同化制御機構:酸化ストレスに曝した細胞を用いて、チオ硫酸から生じる亜硫酸イオンが付加されたスルホ化タンパク質を同定する。
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