計画研究
(1)刺激応答型ROS生成酵素NADPHオキシダーゼ(Nox)の時空間的制御機構:前年度までに開発した高解像度の共焦点レーザー顕微鏡および生化学的細胞分画法などを用いて、種々の培養細胞においてNoxの細胞内局在を解明するための優れた方法を確立していたが、この方法を用いて、Nox1~Nox4は糖鎖修飾およびNox結合タンパク質p22phoxに依存して細胞膜へ輸送されることを明らかにした。また、Noxの糖鎖部位を特異的に認識して細胞膜への輸送を誘導するタンパク質を同定した。一方、p22phoxと結合できないNox5は他のNoxと異なる新規経路で細胞膜へ移行するが、この経路における糖鎖修飾の役割を解明した。(2)Nox活性化とカップルした哺乳類細胞の機能調節:細胞膜タンパク質および分泌タンパク質ではジスルフィド結合が形成されることが多く、また一般にこのジスルフィド結合形成がタンパク質の機能に必須であることが知られているが、Noxがジスルフィド結合形成に関与するタンパク質と複合体を形成すること、さらに、Noxが生成するROSがジスルフィド結合形成に直接関与しうること等を明らかにした。(3)酵母のNO合成制御機構:過酸化水素処理条件下でTah18依存的なNO合成が細胞死を誘導することを明らかにした。また、メタカスパーゼMca1がDre2の分解に関与すること、NO合成を亢進して細胞死を誘導することを示した。(4)酵母の硫黄同化制御機構:チオ硫酸イオンがチオ硫酸硫黄転移酵素(主にRdl1とRdl2)により亜硫酸イオンと硫化物イオンへ変換され、硫酸イオンの同化経路へ合流することを示した。
2: おおむね順調に進展している
(1)刺激応答型ROS生成酵素Noxの時空間的制御機構:平成28年度に「Noxの糖鎖部位を特異的に認識して細胞膜への輸送を誘導するタンパク質の同定した」のは、重要な成果であると考えている。現在は、このタンパク質の作用機構の解明を進めている。また、平成27年度までに「Nox5が他のNoxと異なる新規経路で細胞膜へ移行すること」を示していたが、平成28年度は、この新規経路の分子機構について着実に新たな知見を加えており、研究は順調に進展しているといえよう。(2)Nox活性化とカップルした哺乳類細胞の機能調節:平成27年度までに「Noxが生成するROSがジスルフィド結合形成に直接関与しうること」を示しており、平成28年度は、このシステムの分子メカニズムについて詳細な検討を行ってきたが、Noxがジスルフィド結合形成に関与するタンパク質と複合体を形成することを見出す等、研究は順調に進展していると考えている。(3)酵母のNO合成制御機構:通常、Tah18依存的なNOS様活性はDre2との結合により抑制されているが、酸化的環境においてはDre2から遊離したTah18が未知のオキシゲナーゼ様タンパク質に電子を伝達し、NOS様活性が発現するという新規なNO合成制御機構を提唱した。また、過酸化水素処理に伴ってTah18依存的なNO合成が細胞死を誘導することを明らかにした。さらに、Mca1による細胞死誘導機構にNOが関与する可能性を初めて示した。(4)酵母の硫黄同化制御機構:大腸菌と同様に、酵母においてもチオ硫酸イオンを単一硫黄源に用いると、硫酸イオンと比較して細胞内に亜硫酸イオンや硫化物イオンが増加すること、またチオ硫酸イオンの同化経路にはチオ硫酸硫黄転移酵素を介した経路が関与し、チオ硫酸イオンが亜硫酸イオンおよび硫化物イオンへ変換され、硫酸イオンの同化経路へ合流することを明らかにした。
(1)刺激応答型ROS生成酵素Noxの時空間的制御機構:順調に進展しており、現時点では研究計画の変更等は考えていない。(2)Nox活性化とカップルした哺乳類細胞の機能調節:順調に進展しており、現時点では研究計画の変更等は考えていない。(3)酵母のNO合成制御機構:酵母のオキシゲナーゼ様タンパク質を同定し、NO合成における分子機能を解析する。また、酵母を用いてカスパーゼ依存的な細胞死の分子機構や生理的意義に対する理解を深める。(4)酵母の硫黄同化制御機構:チオ硫酸イオンを硫黄源とした場合、細胞内の還元力と代謝フローが変化することが示唆されたため、これらの変化が酵母の細胞機能に及ぼす影響を検討する。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (16件) (うち国際共著 2件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 5件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 1件、 招待講演 8件)
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