計画研究
行動適応を担う神経回路の機能シフト機構を理解するためには、非侵襲的手法による時系列観察や、膨大かつ複合的なデータ収集と推定精度と感度の高い多次元解析によって、機能的ネットワークの動的変化と因果性を明らかにすることが重要である。本研究班では、陽電子断層撮像法(PET)および、磁気共鳴画像(MRI)による非侵襲イメージング法を用いて、遺伝子改変モデルマウスや非ヒト霊長類であるマカクサルにおける機能的神経回路網を解析するためのイメージング基盤技術を開発し、学習や発達の段階で遷移する神経回路や脳・脊髄損傷後の機能代償に関する回路の特定を目指している。平成27年度は、平成26 年度に引き続き、マカクサル、マウス、ラットの標準アトラスの作製を行いつつ、応用研究として、脳損傷モデル動物を用いてPET、MRIによる機能的神経ネットワークの時空間的変化の解析を行った。マカクサル標準脳アトラスについてはワシントン大学・ロンドン大学との共同作業により、マルチモーダル皮質表面マッチングと拡散テンソル画像を用いた位置合わせ・変形処理による脳形状標準化の技術を融合して高解像度3次元脳画像および皮質表面アトラスを構築し、一部の内容を国際ヒト脳機能マッピング学会、日本神経科学大会で発表した。実験では、皮質内微小電極刺激(ICMS)法により指領域を同定し神経毒イボテン酸溶液を注入することで機能選択的・限局性皮質病変を作製した運動野損傷モデルについて、リハビリによる回復過程における運動機能可塑性と脳機能的ネットワークの経時的な変化を明らかにした。また、11.7Tの高磁場のMRIを用いて、マウスの拡散テンソル解析を展開し、ボクセル内における複数の交差性神経線維を解析することで20μmの超高空間分解能にて神経線維構造を評価可能とした。さらに、ラットにおける学習の獲得・実行の過程や障害、および回復過程での機能的神経回路シフトの動態を解析するために、無麻酔下での脳活動イメージング測定技術の開発を進めた。
2: おおむね順調に進展している
MRIの構造画像での標準アトラスの作製、fMRIやPETによる機能的ネットワークの解析等、ほぼ順調に進んでいる。
一部、マカクサルの病態モデルを用いた解析が遅れているが、オプトジェネティクスやウィルスベクター導入したマウスやラットのモデル動物の解析をすることで推進を図りたい。
すべて 2016 2015 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
J Neurosci.
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http://www2.clst.riken.jp/bfi/content.html